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香港法人が必ず受けなければならない会計監査とは

香港進出により香港で新規会社を設立されたり、日本から香港社の責任者として赴任され、香港の会社運営に携わった際に直面する課題の1つが、この“会計監査”なのではないでしょうか。日本では非上場企業のほとんどが会計監査を受ける必要がないかと思いますが、香港では、上場企業ではなくとも例外なく会計監査を受けなければいけません。

 

そのため、会計監査の対応をしなければならないのが、香港が初めてだというクライアントも少なくありません。そして、香港の会計監査がどのように行われ、どのような準備を進めればいいのかよく分からないため、スムーズに監査を行うことができず、トラブルに見舞われてしまうこともあるようです。

 

また、不明瞭なまま香港の監査が始まってしまった場合、監査人から資料提供の依頼や情報開示を求められた際にも、「なぜそのような情報開示をしなければならないのか」が理解できていないため、困惑されたり、時には憤慨されてしまうこともあるようです。

 

このシリーズでは、香港で行われる監査および青葉監査法人特有の監査手順について、より深くご理解していただくことを目的としております。当記事をご覧いただくことで、少しでも香港の監査に対する不安が緩和され、監査人と協力的な関係を築き、スムーズな監査の一助となれば幸いです。

 

 

香港の会計監査って何?

 

なぜ会計監査を受けなければならないのか?

 

香港では“会社条例141条”により、非上場企業であったとしても、香港法人は会計監査(以下、監査)を適切に行わなければならないことが義務付けられています。よって香港の現地法人は非上場であったとしても例外なく監査を受ける必要があります。

 

なので、香港の会社は、毎年会計年度末の後、その年度の経済活動や商取引を記録、分類、要約された決算書を作成しなければいけません。そして、その作成された決算書に記録されている情報が正確に反映しているかを、監査人によって確認する過程が「監査」ということになります。

 

香港で監査を受けるにあたり、まずそもそも「監査」とは何なのか、その概念をご理解いただくことが重要であると言っても過言ではありません。

 

 

監査とその目的

 

「監査」を要約すると、

「企業が作成した決算書に記録されている情報が、正確に反映しているかどうかを監査人によって確認し、その結論となる意見を述べ利害関係者(ステークホルダー)に報告すること。」

となります。

監査の結果、監査人がその決算書が適正であるかどうか意見を述べることにより、その決算書が信用できるものであるかどうかを、利害関係者である株主や香港税務局が判断出来るようにすることが監査の目的であるといえます。

 

 

主な利害関係者(ステークホルダー)

・株主

・香港税務局

・銀行、金融機関など借入先

・取引先企業

・(潜在的な)投資家

など

 

 

監査人の意見について

意見 概要
無限定適正意見

(Unqualified Opinion)

監査人は、会社の財務諸表が適正で(真実かつ公正である)、香港の会計基準に準拠していると結論付けています。
限定付適正意見

(Qualified Opinion)

監査人は、会社の財務諸表の一部に誤りがあるけれど、それ以外は適正で香港の会計基準に準拠していると結論付けています。
不適正意見

(Adverse Opinion)

監査人は、会社が提供した財務諸表が適正ではない(または、真実かつ公正な表示を示していない)と結論付けています。
意見不表明

(Disclaimer of Opinion)

監査人は、意見を表明するための監査証拠が不十分である(重要な監査手続きが実施できなかった)と結論付けています。

 

適正であるかどうかの意見を述べなければならないため、監査人はその責任を負うことになります。そのため、決算書を作成した企業の「経理担当者」の方に、監査人が適正であるかどうかを納得するまで、取引の性質や証拠書類(以下、監査証拠)を確認させていただくことになります。またこの監査証拠は、監査人が意見を形成する過程で使用した全ての情報・資料であり、そして監査証拠は、十分(量)かつ適切(質)なものでなければなりません。

 

例えば・・・

十分な量:売上高の増加に伴い、売上に対する監査業務の「量」も増加させる必要があります。

適切な質:外部から提供される監査証拠は内部から提供されるものよりも「質」が高いとされています。

 

 

監査人は賃借対照表、損益計算書の構成要素の中で、特に重要性が高い項目や虚偽記載のリスクが高い項目に注目し、そのような項目に対して、真実かつ公正であることを裏付けるために、他の項目に比べて多くの監査証拠の収集を必要とすることがあります。そのため、監査を経験されたことのある方で、なぜここまで監査人から執拗に質問や、資料の提供を要求してくるのだろうと、不思議に思われているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

監査報告書について

監査報告書は以下の内容から構成されます。

 

・取締役報告書(Report of the Director’s) 

・独立監査人の報告書(Independent Auditor’s report) 

・財務諸表(Financial Statements) 

  -注記(Notes to the Financial Statement)

 

 

この監査報告書は、株主に対しては、毎年開催される年次株主総会で報告され、香港税務局に対しては、法人税の申告の際に報告され、銀行などについては借入をする際に提出が求められます。このような色々な形で会社の財務状態や状況を監査報告書にて報告され、各利害関係者がその都度に応じて必要な判断がくだされます。(銀行は貸し出すローンの金利などを決めたり、香港税務局は、税収となる法人税の金額が間違っていないかどうかなど。)

 

なお、監査報告書で示される監査人の意見は、株主に向けてのみに有効となっているため、監査人は株主以外に対する意見の責任を持ちません。

 

 

 

 

株主が日本ご本社である香港の日系企業において、この監査報告書を、日本本社の経理の方や、ご本社の監査人へ提出した際、監査報告書の内容について、あれこれ説明が求められることがあるかと思います。そんな時に、青葉監査法人は、香港法人の責任者、日本本社、ご本社の監査人の間に入った連携が秀逸であると評価していただき、大手監査法人の系列監査人の代わりに香港法人の監査人として任命していただいているケースが多くあります。何故そんなことを理由に、青葉監査法人を任命することになるのかと不思議に思われる方は、こちらのページをご参照いただけますと幸いです。

 

 

今回の記事では、監査の大体のイメージやその目的について説明させていただきました。次回からは監査の実務上に関してもう少し掘り下げてご紹介させていただきたと思います。

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

免責事項:

  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
  2. 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
  3. 法律法規の解釈や特定政策の実務応用及びその影響は、それぞれのケースやその置かれている状況により大きく異なるため、お客様各社の状況に応じたアドバイスは、各種の有償業務にて承っております。

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