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大湾区における医療器械産業の発展状況【大湾区情報レター Vol.6】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。

 

 

以前お出ししました「政策から読み解く大湾区の活用方法」で医療健康産業をご紹介いたしましたが、今回は大湾区における医療器械産業の発展に焦点を当ててみました。

 

 

2019年2月18日中国国務院発行の「大湾区発展規則要綱」において、大湾区における重点的項目として「健康湾区」が取り上げられており、大湾区の健康産業GDPが2028年には2兆元、2030年には2.5兆元から3兆元の規模に到達することを見込んでいます。そのうち、医療器械産業は大健康産業の「国之重器(国家重点事業)」であり、各国のテクノロジーの進歩と国民経済の現代化発展の水準をはかる上で需要な指標の一つとなっています。

 

 

以下の分析データは、大湾区の医療器械業界発展水準と発展の質を客観的に評価するために、および大湾区の健康産業を持続的に発展させていくために、広州市衆成医療器械産業発展有限公司が国内初の医療器械産業のビッグデータプラットフォームに委託し、産業規模、業界企業数、登録製品数、イノベーション能力、専門サービス、産業クラスターなど多角的視点から、大湾区医療器械産業の発展の現状を分析した結果となっています。

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大湾区における医療機器産業発展の動向

1.大湾区内の産業イノベーションの方向性

 香港・マカオ・広州・深センなどの中心都市の科学研究リソースの利点とハイテク産業の基盤に依存し、大湾区は、国家レベルの新区、国家自主イノベーション模範区、国家ハイテク区などハイエンド要素が集まるプラットフォームを十分に活用することにより、新世代生物技術、ハイエンド設備製造、新材料などに関する医療器械が大湾区内の産業を促進していくことが予想されます。

 

また、ハイエンド医学診療設備、遺伝子検査、スマートロボット、3Dプリンターなどの重要分野において重大な産業プロジェクを育成します。

 

 

2.先進製造最適化の方向性

大湾区は国家新型工業科産業の模範的基地であり、香港、マカオ、深センの強力なイノベーション研究開発能力と統括拠点の密集、および珠海、仏山、恵州、東莞、中山、江門、肇慶などにおける産業チェーンの利点を十分に生かし、産業のマッチングを強化し、共同発展のレベルを向上させていく傾向にあります。

 

同時に東莞、仏山などは都市の産業改革と高度化を促進し、香港では当地の有利な分野における「再工業化」を模索していくこととなります。

 

 

3.トップのアドバンテージと放射的発展

 広州市、深セン市医療器械産業発展の総合的レベルは、中国全土における上位5位以内に入っており、同時に仏山、珠海、中山などの都市は、発展基盤と潜在能力の両者を兼ね備えています。大湾区においては、広州、深センが豊富な医療器械産業のリソースと専門サービス能力を十分に発揮し、周辺都市での医療器械製品登録と発売を加速させることにより、中国内の医療器械産業地区におけるリーダー的地位を保持していくと思われます。

 

 

 

大湾区医療器械産業発展の現状データ分析

1.産業規模

2019年大湾区医療器械産業規模は1,254億8,300万元に達しており、前年同期比17.9%増。既存の医療器械ハイテク企業は952社、テクノロジー型中小企業673社。株式上場企業数は、メインボード1社、イノベーションボード1社、ベンチャーボード13社、SME(中小企業)ボード3社。

 

 

2.業界内訳をデータで読む

1)生産企業数

 2019年末時点において、大湾区に実在の医療器械生産企業は、2,783社。2017年~2019年の大湾区生産企業数はゆるやかに増加している。(表1参照)

 

 その内訳は、Ⅰ類製品※(綿棒・絆創膏など)生産企業は1,665社、Ⅱ類製品(医療用マスクなど)生産企業は1,541社、Ⅲ類製品(ステントなど体内に植え込むもの)生産企業は218社となっている。(複数類別を扱う企業の重複有)

 

※Ⅰ類からⅢ類にかけて、人体に影響の少ないものから影響が大きいものへと分類されている。

 

・表1

 

2)企業数

 2019年末時点、大湾区において、9都市に医療機器事業会社は合わせて64,077社。企業の所在地トップ3は広州市17,785社、深セン市16,690社、東莞市9,228社である。また、大湾区には3,894社のサードパーティオンライン販売企業がある。

 

 

3.製品登録数

 2019年末時点、大湾区における当局への登録済み医療器械製品は19,452点で前年同期比19.7%増。そのうちⅠ類製品は9,876点で全体の50.77%、Ⅱ類製品は8,203点で同42.17%、Ⅲ類製品は1,373点で同7.06%となっている。(表2参照)

 

・表2

データリソース:衆成医械ビッグデータプラットフォーム

 

 2017~2019年における大湾区医療器械Ⅱ類、Ⅲ類製品の年間初回登録数は以下表3の通りであり、3年間における年平均数は9,785件となっている。

 

・表3

データリソース:衆成医械ビッグデータプラットフォーム

 

1)地域分布

 大湾区における医療器械登録製品の都市別分布(トップ3)は、深セン市7,531件、広州市6,903件、仏山市1,600件であり、上位2都市が突出している。

 

 

2)医療機器製品分類(細分類)

大湾区にて登録された主な医療器械製品は体外診断試剤が39.45%を占めている。それを除くと、体内注入・看護及び防護器械9.33%、物理治療器械8.48%、口腔科器械7.25%、医療用診察及び監視器械5.41%、医療造影器械4.85%、臨床検査器械4.33%、非電源手術器械3.26%などとなっている。(表4参照)

 

・表4データリソース:衆成医械ビッグデータプラットフォーム

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4.イノベーション能力

1)イノベーション企業

 イノベーション企業のカテゴリーには、主にハイテク企業及び科技型中小企業※が含まれる。2019年末時点において大湾区での医療器械ハイテク企業は952社実在しており、前年同期比329社増。都市別トップ3は、深セン市346社、広州市267社、仏山市93社となっている。

 

2016年~2019年におけるハイテク企業申請企業は、年平均で292社となっており、テクノロジーのレベルは緩やかに上昇しているといえる。(表5参照)

 

 

※科技型中小企業とは、一定数の科学技術人材による化学技術の研究開発活動を行い、独自した知的財産権を取得してハイテク製品やサービスに転換し、持続的な発展を実現する中小企業のことをいう。

 

・表5

データリソース:衆成医械ビッグデータプラットフォーム

 

 2019年末時点での大湾区テクノロジー型中小企業は673社で前年同期比124社増。都市別トップ3は広州市279社、深セン市238社、珠海市61社となっている。

 

 

2)   イノベーション製品

 「イノベーション医療器械特別審査手順(試行)」によると、中国国内の医療器械イノベーション審査承認制度は、医療器械の安全性、有効性を確保し、医療器械の研究、およびイノベーションを奨励し、新しい医療器械技術の推進および応用を促進し、医療器械産業の発展を促進するための特別な審査承認チャネルとなっている。2019年において大湾区でイノベーション審査承認チャネルに入った製品は以下の計15件(表6参照)である。

 

 

【大湾区2019年イノベーション審査通過商品と企業】(表6)

データリソース:衆成医械ビッグデータプラットフォーム

 

 

また、「医療器械優先審査手順」によれば、中国の医療器械審査における優先承認制度は、特殊年代層(幼児、高齢者など)および重大疾病(悪性腫瘍、希少疾病など)向けの臨床応用ニーズに対する特別な審査承認チャネル確保のためとなっている。2019年において大湾区で優先審査承認チャネルに入った製品は計25件である。

 

 

3)   特許申請

 大湾区における豊富な科学研究リソースと研究開発機関に依存している医療器械業界は、発明特許や文献などの知的財産権の成果も豊富であり、2019年末時点で、大湾区における発明特許は累計32,972件に上った。特許の種類別内訳は、実用新型が57.91%、発明認可は15.33%、意匠(外観デザイン)は26.56%となっている。

 

 また、2017年~2019年の大湾区における医療器械に関する発明特許数は平均40.8%の成長速度を保っており、3年間での平均特許申請数は6,207件である。(表7参照)

 

 

・表7

データリソース:衆成医械ビッグデータプラットフォーム

 

 

5.専門サービス

1)三甲病院(三級甲等医院:中国の最高レベルの医療機関)

 三甲病院は医療器械産業の重要な実践上の担い手であり、病院が三級甲等(三甲)レベルにアップグレードするには、診療範囲の拡大、部署の増加、先進医療検査設備、医療消耗材などの導入、続いて医療サービスの質の向上により医療サービスのニーズを満たすことが求められる。2019年末時点で大湾区には三甲病院は144ヶ所あり、そのうち中国全国三甲病院ランキングで高順位の中山大学付属第一医院、南方医科大学南方医院、中山大学孫逸仙記念医院などは、いくつかの国家自然基金プロジェクトなどを受け持っている。都市別の三甲病院数トップ3は、広州市83ヶ所、佛山市18ヶ所、深セン市14ヶ所となっている。

 

 

2)動物実験機関

 動物実験は医療器械の安全性と有効性を評価するための重要な方法の1つであり、製品設計、完成のために対応する根拠の提供、医療器械が、臨床研究段階に入ることができるかどうかの根拠の提供、臨床実験被験者の保護の実現、医療器械が臨床試験を実施できるか、もしくは臨床試験をいかに行うかを決定するための参考情報を提供するといった役割を持っている。

 

 2019年末時点で、大湾区において動物実験実施設備のある企業、機関は147ヶ所、動物実験生産能力を持つ企業、機関は20ヶ所。都市別(トップ3)では、広州市105ヶ所、深セン市17ヶ所、東莞市9ヶ所となっている。

 

 

3)臨床試験機関

 医療器械の臨床試験資格を取得した医療機関は、規定に従って正常使用条件下において登録申請をした医療器械の安全性と有効性を試験または検証を行う。2019年末時点での大湾区における医療器械臨床試験機関は93ヶ所となっている。

 

 

4)医療器械検査測定機関

 「医療器械監督管理条例」によると、医療器械検査測定機関とは、第2類、第3類医療器械製品登録申請資料において、製品の検査報告書を提供する唯一の指定機関となっている。2019年末時点で大湾区における実用医療器械臨床実験機関は51ヶ所。都市別分布(トップ3)は、深セン市25ヶ所、広州市22ヶ所、東莞市1ヶ所となっている。

 

 

6.産業クラスタ

 

 先進製造、スマート製造は将来の製造業発展の重要なトレンドであり、先進製造業と戦略的新興産業を主体とする産業構造の基礎が大湾区においておおむね形成され、IT及び科学研究産業のクラスターを形成してきた。

 

科技部(中国科学技術省)が承認した3つの国家レベルのハイテク産業帯のうちの1つである珠三角ハイテク産業帯内には、広州、深セン、仏山、中山、珠海、恵州の6つの国家レベルのハイテク産業開発区があり、東莞、肇慶、江門の3つの省レベルハイテク産業開発地区がある。広州、珠海の2つの国家レベルソフトウェア産業基地、3つの国家レベルハイテク製品輸出基地、12の国家レベルハイテク発展計画である「863計画」の成果である実用転化基地、および1つの国家レベル大学科技園がある。

 

 

1)クラスタ

 大湾区の医療器械産業は主に深セン経済技術開発区、南海経済開発区、広州番禺経済技術開発区、深センハイテク産業開発区、広州経済技術開発区及び珠海国家ハイテク産業開発区などに集まっている。

 

 

2)特定コンセプト園区

 現在、大湾区は徐々に医療器械企業を集め、生産を行うことをコンセプトとした園区を打ち立てようとしており、その中でも代表的な園区として、深セン市生物医薬イノベーション産業園、広州開発区科技企業アクセラレーター、南屏科技工業園などがある。(表8参照)

 

・表8

データリソース:衆成医械ビッグデータプラットフォーム

 

 

 

【参考サイト】

大湾区医療器械産業発展の現状(衆成医械;「健康界(CN-HEALTHCARE)」)

 

 

 

*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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