【香港】2025年5月1日より強制積立金(MPF)と解雇補償金・長期服務金との相殺廃止!雇用主がいま準備するべきこと

2022年6月に正式に決定した、MPF(香港の年金)と解雇補償金Severance Payment (SP: 解雇補償金)・Long Service Payment (LSP: 長期服務金)との相殺廃止ですが、正式にスタートとなる2025年5月1日に迫っています。
そこで、改めてこのMPFと「解雇補償金・長期服務金」の相殺廃止に関する特筆事項についてご案内いたします。
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雇用主の負担がいきなり膨大になるわけではない
解雇補償金は24ヶ月以上・長期服務金は5年以上勤務した従業員を雇用主側の事由により雇用解除する場合に支払う義務があり、これまでは、これら「解雇補償金・長期服務金」と雇用主が積み立てたMPFを相殺することが出来ていましたが、この「相殺廃止」という意味は、5月1日から解雇補償金や長期服務金の全額を会社が負担をしなければならなくなったということではありません。
1)2025年4月30日までに積み立てられた雇用主負担のMPFは今まで通り解雇補償金/長期服務金との相殺が認められています。
2)2025年5月1日以降の積立分については「相殺廃止」されることになりますが、2050年までの25年間において、雇用主の負担上限額や負担率を超える分については、政府が雇用主に対して補助金を支給することとなっています。
(例:2025年~2027年の3年間においては、雇用主の負担率50%またはHKD3,000のいずれか低い方を雇用主が負担、残りは補助金を申請)
これは「相殺廃止」前に、雇用主が大量に従業員を解雇することを防ぐために、段階的に「解雇補償金・長期服務金」を全額負担とするようにとられた措置です。詳細は以下の過去記事、資料をご覧ください。
強制積立金(MPF)と解雇補償金・長期服務金の相殺が廃止(2022年6月記事)
【香港】MPFと退職金相殺廃止後25年間、政府が雇用主へ補助金を支給(2023年8月記事)
「MPFと*解雇補償金・長期服務金*の相殺廃止」という言葉が先走り、雇用主側も従業員側も誤った認識を持っていることが多いため、これを機会に、労使双方正しい情報を共有し、理解を深めることをお勧めいたします。
会計上、「解雇補償金・長期服務金」の引当検討が必要に
相殺廃止に伴い、会計面で、2025年5月以降に決算日を迎える企業より、企業が負担する必要があると考えられる金額の引当金の計上を検討することが必要となってきます。
各従業員の入社日、勤続年数、年齢、給与などのデータを元に、将来支払いが発生するであろう金額を試算し、引当金を計上します。
定年年齢は香港の法令では特に定められていませんが、会社の社内規程で定年退職年齢が定められており同規程により従業員が退職する場合においては、会社による雇用解除となり、長期服務金支払いの対象になります。また規程がない場合においても65歳以上の従業員が退職する場合には、長期服務金支払いの対象になるため、定年を迎える従業員についても考慮する必要があることにも注意が必要です。
MPFプロバイダーでの積立/残高管理が、積金局(MPFA)のサイト一括管理に
香港のMPF(強制積立金)は、毎月各雇用主(企業)が契約する民間のMPFプロバイダー(銀行系、保険系など)に対して従業員の給与及びMPF額を報告し、現状、紙ベースでの報告及び各プロバイダーのポータルサイト上での手続きが認められていましたが、MPF管轄機関運営会社による「eMPF 積金易」ポータルサイトにすべて一括管理されることになりました。
そのため、2024年6月より、各プロバイダー、スキーム別に順次移行手続きが進められており、2025年末までにすべて完了する見込みとなっています。皆様のオフィスにも移行手続きに関する通知レターが届く/届いているかと存じますので、通知内容に従い、手続きを進める必要があることにご留意ください。移行後は、MPFの管理は同サイトに移り、MPFプロバイダーは、預かった資金の運用等を引き続き行うことになります。
また、この「eMPF 積金易」は、従業員個人も登録し、残高や投資スキームの管理に利用出来る仕様になっています。
青葉グループでは、香港での従業員への給与、MPF計算、申告などの代行、雇用解除に伴う長期服務金や解雇補償金の計算、関連書類の作成、今後の会計上の引当計上に関するアドバイスなどの業務をご提供しておりますので、お気軽にお問合せ下さい。
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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