NEWS

ニュース

「中華人民共和国増値税法」は2026年1月1日から実施!

 

2024年12月25日、中華人民共和国第14期全国人民代表大会常務委員会第13回会議で、「中華人民共和国増値税法」(以下、「増値税法」)は可決され、2026年1月1日から正式に実施される予定です。

 

「増値税法」の立法は、基本的には「増値税暫定条例」(以下、「元条例」)等の法規定を踏襲していますが、法律改訂・規則完備により、新しい注目ポイントも出てきております。増値税の法制化により、中国における納税者・企業の税負担の減軽、更に完備された税務ガバナンス体制の構築との繋がりは期待されます。

 

では、現行政策と比べ、「増値税法」において一体どういう注目すべき変更点があるのかについて、ご案内させていただきます。

 

 

1.中国における「金融商品販売」の判定基準

金融商品の販売については、現行政策によると、増値税課税対象であるかどうかを判断する際に、サービスを販売する際と同じ基準で適用されています。財税[2016]36 号文の規定に従い、サービスの販売者又は購入者が中国国内に所在する場合、サービスを販売する組織及び個人は増値税の納税義務者として、中国で増値税を納付しなければならないとされています。

 

また、完全に中国国外で行われたサービスについては、特例として、「中国国内でのサービス提供」に該当しない(課税対象外)と規定していました。しかし、実務においてサービスが完全に「中国国外で行われた」かどうかの判断については、まだ見解が分かれており、不確実性が残っています。

 

 

今回の増値税の法制化により、「増値税法」第4条では、「金融商品の販売」を一般サービスから分離し、別の課税対象取引として分類し、完全に「中国国内で行われた」かどうかの判断基準(課税対象)を下記のとおりに規定しました。

 

「金融商品が中国国内で発行される、または販売側が中国国内の組織や個人」である場合、中国国内で行われた金融商品販売と判定され、課税対象となります。

 


新たな判断基準はより明確となったため、国内の購入者が海外証券取引所で上場された会社の株式を購入する際に、サービスが完全に「中国国外で行われた」かどうかを判断する必要がなくなり、中国国内で発生した課税対象取引ではないと判断できるようになりました。

 

現行政策 増値税法

営業税に代えて増値税を徴収する試験の全面的な実施に関する財税[2016]36号の通達

 

 

第13条 中国国内におけるサービス、無形資産あるいは不動産の販売とは次のことを指す。

 

(1)サービス(不動産のリースを除く)または無形資産(自然資源使用権を除く)の販売者あるいは購入者が中国国内にあること。

 

第14条 下記の場合は、中国国内でのサービスあるいは無形資産の販売に該当しない。

 

(1)国外の組織あるいは個人が国内の組織あるいは個人に、完全に国外で発生するサービスを販売すること。

第4条 中国における課税対象取引とは、次のことを指す。

 

(3)金融商品は中国国内で発行される、または販売側が中国国内の組織や個人である場合、中国における金融商品販売と判定されます。

 

 

 

 

2.みなし販売の範囲

今度施行される「増値税法」における「みなし課税取引」の範囲は、現行政策における「みなし販売」の項目と比較して縮小されており、それに取引対象は貨物、無形資産、不動産及び金融商品に限られています。

 

現行政策 増値税法

「中華人民共和国増値税暫定条例実施細則」

第 4 条 組織または個人商工事業者の下記行為は、物品の販売と見なす。

 

(1)物品をその他組織または個人に引き渡して代理販売させる。

(2)物品を販売、代理販売する。

(3)二つ以上の組織を設けて一括計算を実施している納税者が、物品を一つの組織から他の組織に移送して販売用としている。ただし、関連する組織が同一の県(市)に設けられている場合は除外する。

(4)自家生産または委託加工の物品を非増値税課税項目に用いる。

(5)自家生産、委託加工の物品を集団の福利または個人消費に用いる。

(6)自家生産、委託加工または買い入れた物品を、投資としてその他の組織または個人商工事業者に提供する。

(7)自家生産、委託加工または買い入れた物品を、株主または投資家に割り当てる。

(8)自家生産、委託加工または買い入れた物品を、無償でその他の組織または個人に贈与する。

第5条 下記に該当する場合、課税取引と見なし、本法律に従って増値税を納付する必要である。

 

(1) 組織または個人商工事業者が自家生産または委託加工した物品を、集団福利厚生または個人消費のために使用すること。

(2) 組織または個人商工事業者による貨物の無償譲渡。

(3) 組織または個人により、無形資産、不動産または金融商品の無償譲渡。

 

ただし、無償で提供する他の課税サービスについて、課税取引と見なすかどうかは更なる詳細情報により判断する必要です。

 

 

 

 

3.簡易課税で適用される徴収率

現行政策により、簡易課税で適用される徴収率は3%で、特定の場合においては5%である一方(不動産販売、不動産・土地貸し等)、「増値税法」第11条の規定により、簡易課税方法で適用される徴収率は一律3%となります。

 

ただし、今後5%の徴収率が廃止されるかどうかについては、今後の発表を待つ必要があります。

 

 

 

 

4.売上額が明らかに高い場合のみなし認定

現行政策により、納税者が課税サービスを提供する価格が明らかに低く、かつ合理的な商業目的を有していない場合、主管税務機関は規定に従い売上額を見なしで認定する権利を有します。

 

「増値税法」において、売上額が明らかに高い場合にも、主管税務機関は売上額を見なし認定する可能性が規定されていました。

 

 

増値税法

第20条 売上額が明らかに低く、もしくは高く、かつ合理的な商業目的を有しない場合、税務機関は「中華人民共和国税収徴収管理法」および関連行政法規により売上額を見なし認定する権利を有する。

 

 

当規定は、納税者が意図的に売価を上げ、関連業者との取引を利用して控除留保税額還付または「即徴即退」(輸出還付)等の優遇措置を悪用し、不正の利益を得ることを防止することに繋がります。


実務上では、売上額が明らかに高い場合に対し、主管税務機関は売上額を見なし認定する事例がすでにありましたが、具体的な確定・調整方法については、あらたな実施条例の段階での更なる明確化が期待されます。

 

 

 

5.期末留保税額還付

現行政策により、当期仕入税額が当期売上税額を上回る場合、その差額を翌期に繰り越して控除するのは一般的な処理方法です。一方、「増値税法」により、税金の還付という選択肢が増え、納税者のキャッシュフローに関わるプレッシャーは緩和されます。

 

 

増値税法

第21条 当期仕入税額が当期売上税額を上回る場合、その差額を翌期に繰り越して控除するか、若しくは還付される。

 

 

 

6.控除対象外仕入税額の範囲

現行政策により、貸付サービスの購入にかかわる仕入税額は売上税額から控除してはなりません。

一方、「増値税法」では、控除対象外仕入税額の項目から貸付サービスが除外され、納税者は貸付サービス購入の発票を手に入れれば、仕入税額を控除できるようになります。


また、「増値税法」における控除対象外である「飲食サービス、住民の日常サービス及び娯楽サービスの購入」を、「直接消費する」ものに限定することで、特定の飲食サービス、住民の日常サービス及び娯楽サービスの購入は仕入税額を控除できる可能性があると思われますが、実施条例の段階での更なる明確化が期待されます。

 

現行政策 増値税法

営業税に代えて増値税を徴収する試験の全面的な実施に関する財税[2016]36 号の通達

 

第27条 以下の項目の仕入税額は、売上税額から控除してはならない:

 

(1) 簡易課税方式が適用される項目、増値税免除項目、集団福利厚生または個人消費のために使用される購入物品、加工・修理・組立修理役務、サービス、無形資産および不動資産。

納税者の交際費は個人消費である。

(2)非正常損失となる購入物品、関連する加工・修理・組立修理役務、サービスおよび輸送サービス。

(3) 非正常損失となる仕掛品や完成品に消費される購入物品(固定資産を除く)、加工・修理・組立修理役務、輸送サービス。

(4) 非正常損失となる不動産、および当該不動産に用いた購入物品、設計サービスおよび建築サービス

(5) 非正常損失となる不動産の建設中工事に用いた購入物品、設計サービスおよび建築サービス

(6) 購入した旅客輸送サービス、貸付サービス、飲食サービス、居住者の日常サービス、娯楽サービス。

(7) 財政部および国家税務総局が規定するその他のケース。

第22条 下記の仕入税額は、売上税額から控除してはならない:

 

(1) 簡易課税方式が適用される項目の仕入税額。

(2) 増値税が免除される項目の仕入税額。

(3) 非正常損失となる項目の仕入税額。

(4) 集団福利厚生または個人消費のために購入・ 使用する物品、サービス、無形資産、不動産の仕入税額。

(5) 飲食サービス、住民の日常サービス、娯楽サービスを購入し、直接消費のために使用した場合の仕入税額。

(6)国務院が規定するその他の仕入税額。

 

 

*注記事項;

現時点では、「増値税法」の実施細則及び移行期間政策はまだ出ておらず、政策変更の方向性及びガイドラインや案内などはない状態ですので、更なる詳細情報をまだ入手できません。新しい情報が入り次第、引き続きご案内させていただきます。

 

 

 

 

各企業の状況により、今回ご紹介した点以外にも、恐らく、ケースバイケースで対応しなければならないこともあるかと思います。「増値税法」に関して、ご懸念やご不明点などがございましたら、Aobaグループには経験豊富な税理士が多数在籍していますので、いつでもお気軽にご相談ください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考情報リンク先】

「中華人民共和国増値税法」

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

免責事項:

  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
  2. 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
  3. 法律法規の解釈や特定政策の実務応用及びその影響は、それぞれのケースやその置かれている状況により大きく異なるため、お客様各社の状況に応じたアドバイスは、各種の有償業務にて承っております。
  4. 本文は国際的、業界の通例準則に従って、Aoba Business Consultingは合法チャネルを通じて情報を得ておりますが、すべての記述内容に対して正確性と完全性を保証するものではありません。参考としてご使用いただき、またその責任に関しましても弊社は負いかねますことご了承ください。

  5. 文章内容(図、写真を含む)のリソースはインターネットサイトとなっており、その版権につきましては原作者に帰属致します。もし権利を侵害するようなことがございました際は、弊社までお知らせくださいますようお願いいたします。

※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

Contact Us お問い合わせはこちら