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中国-香港間のクロスボーダー間送金に関する留意点

 

大湾区構想、人材の流動化、高速鉄道、出入境手続きの簡略化による往来の活発化、などにより中国本土と香港間のボーダーはかなり低くなってきたことが感じられる昨今ですが、外貨政策については、相変わらず中国が厳しい為替管理が行われており、今もなお、中国-香港間の送金は、他外国諸国と同様、複雑な手続きを踏む必要があります。

 

そこで今回は、日系企業の皆様がよく行う取引を中心に事例をご紹介します。

 

また、これらの一部は中国-日本など他国、地域間の送金にも共通する内容を含んでいますので、ご参考にしていただければ幸いです。

 

 

貿易取引:売掛金、買掛金の受領、支払

製造は中国本土で行い、香港法人を通して世界各地に商品を販売する、というスキームは今もなお多くの企業で行われている香港の金融の自由度や為替の安定性を活かしたスキームです。

 

仕入れた製品代金を中国に支払ったり、販売した原材料代金を中国から受領する場合において、実際の取引額に則した税関記録を証拠として提示することで、初めて送金、受領が可能となります。そのため、未通関の商品代金については、基本的に決済ができないため注意が必要となります。

 

 

 

 

配当の受け取り

香港法人が中国に出資し、合弁会社や子会社を有していたとします。もしも、その子会社の業績が好調で配当を中国国外へ支払う場合は、董事会決議、法定積立、源泉税納付などの手続きが必要となります。(参照過去記事:【中国】勉強してみませんか?中国子会社からの配当金送金について

 

 

なお、同記事中にあります、本来配当にかかる源泉所得税10%が、香港と中国の租税協定の優遇を活用することで「源泉税5%」となる優遇措置の適用条件について、最近、従来とは異なる動きが出てきています。

 

 

この5%の優遇税制を享受したい場合の条件の一つが、香港税務局により発行される「香港居住身分証明書」の取得、提出となります。

 

今までこの証明書は、香港における取締役の常駐、従業員やオフィス、事業活動など実体の存在があって発行されるものでしたが、2023年6月12日の香港税務局通達により、これらの条件を満たしていなくとも発行されるようになりました。

(参照過去記事:香港の居住者身分証明書取得について

 

 

しかし、このように、香港で簡単に居住身分証明書が取得できるようになったからか、中国本土の各税務局が税収に力を入れ始めてきているのか、香港側で同証明書を取得できたとしても、結局中国現地の税務局が以下のような情報や証拠資料の提供を求めてくることが多くなっています。

 

・香港法人に会社としての実体の有無(オフィス、取締役、従業員、会社の機能)

・香港法人が配当資金を自ら運用する権限を持っているか

・受け取った配当を12ヶ月以内にその50%以上を株主を含む他者に移していないか

 

 

香港法人に実体がなく、配当金が他者に素通りしているような状況が認められると、5%の優遇税制が認められず、従来通りの10%となり、残り5%の源泉税の支払と遅延に伴うペナルティが課せられるため、注意が必要です。

 

 

 

サービス費用の支払、受取

香港では、オフィスや人件費等の維持コストが急上昇しており、中国の景気等に関する影響も少なからず受けていることから、香港法人の業務を縮小し、事務手続きを中国を含む香港外で行うことも増えてきています。

 

この場合、通常業務委託費用が発生しますが、これらの費用を香港から中国へ支払う際には、外貨を中国へ送金することとなるため、グループ間取引であったとしても、契約に基づいた正当な支払いであることを証する業務委託契約書を作成し、いつでも銀行等に提出できるようあらかじめ準備を行う必要があります。

 

また逆にコミッションやサービス費などを中国から香港へ支払うこともありますが、これらも同様に契約書などの提出を送金時に求められることがあり、また中国側で源泉所得税を納付してからの送金となることに注意が必要です。

(*送金目的等にもよりますが、法人が1回にUSD50,000を超える送金を行う際には事前に中国税務当局への届け出が必要となります。)

 

 

 

個人が中国で受け取ることができる外貨

海外の本社などから中国にて給与を受領する場合、1年間(1月~12月)でUSD50,000までという制限があります。そのため、給与のほとんどを日本や香港など中国外で受領しているケースが多くあるかと思います。

 

このように中国国外で給与の支払いおよび受領をしたとしても、中国にて就労している場合、中国源泉の所得であるとして、中国外で受領している給与所得も中国で課税対象となります。

 

また、中国は累進課税制を採用しているため、駐在員の個人所得税額がかなりの金額になり、駐在員の個人所得税を払うために中国に送金を行わねばならない事態になるものの、年間USD50,000のリミットをオーバーしてしまうことが多々発生します。

 

 

このような場合、銀行に対し、個人所得税納付のため人民元が必要となることを説明することにより、特別に制限を超える金額を受け取ることができるよう申請し承認を受ける必要があります。

 

 

 

出資金(資本金、増資)送金、清算時の回収

中国の外資企業の場合、出資金は人民元でなく、外貨建てで行うことが可能ですが、中国外から中国への送金については「資本金口座」を開設の上、同口座宛に送金をする必要があります。また、法人清算時、銀行口座の中国外の親会社への残高送金時には、中国外貨管理局の許可を得た上で送金手続きを行うことが必要となります。

 

 

また、資本金については、2024年7月の新会社法により「設立日から5年以内に全額が払い込まれなければならない」等変更が生じていますので、以下記事もご参照下さい。

 

【中国】新会社法に関わる変更点9大項目の解説

【中国】新会社法「資本金の支払い期限」による7つの変化とは

 

 

 

 

貸付金

中国外から中国法人(外資企業)への外債貸付については、「投注差」と言われる総投資額と登録資本金との差額の範囲内、もしくは「マクロプルーデンス方式」と呼ばれる現地法人の純資産額をもとに算出した外債枠設定範囲内のどちらかを利用することとされています。

 

そのため中国子会社の資金繰りにおいて、この外債枠を超える資金が必要とされる場合には、増資など、他の方法を検討する必要があります。

 

 

 

 

最後に

これらのように、中国本土-香港間では、外貨送金管理により、相変わらず各手続きを踏む必要があります。それに引き換え、香港-日本間の送金において香港ではこれらのような為替の制限がほとんどないことから、香港法人や香港の金融機関を利用するメリットは以前から変わらずかなり大きいものであると言えます。

 

 

日本や香港などの中国本土外との送金に必要となる、中国本土側での情報や契約書など書類の作成、香港法人の活用方法など、お気軽にお問合せ下さい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
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