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香港ビジネスが売上減少・コスト高。香港社をどうする!?

 

数年前のパンデミックが嘘かのように平穏な日常に戻った昨今ですが、残念ながらビジネス状況が新型コロナウイルス前の水準に戻らず、逆に下降傾向にあるというお話を耳にすることが少なくはなりません。

 

では、今後香港社をどうするのがベストであるか。今回は、このような状況時に日系企業がよくご検討されるシナリオについて、お話しさせていただきたいと思います。

 

 

 

シナリオ1:香港社を縮小する場合

ビジネスが下降傾向にあるものの、今後も香港でのビジネスや、香港法人の機能(グループ内の金融機能、統括会社としての利用など)の継続利用を考えている場合、香港社をダウンサイジング、もしくはペーパーカンパニー化するという2つの選択肢があります。

 

 

A. ダウンサイジング

言葉通り、以下の一例のように香港社のビジネスサイズを縮小します。

 

  • 香港社のオペレーションをグループ会社で行う、
  • 香港社の商流をグループ会社へ移転する、
  • それに伴い、オフィスの縮小や、人員の削減を行う。

 

この方法を検討する場合、各種契約事項の更新、新規締結、解除などが必要になります。社外であれば取引先やオフィスの大家、社内であれば従業員の解雇など。この中で、従業員解雇時の重要なポイントをいくつか挙げてみますと、

 

 

不当解雇にならないための手続きと交渉

経営不振によるダウンサイジングに伴う解雇といった会社都合による解雇の場合、最終給与や未使用の有給分の計算などのほか、少なくとも香港の雇用条例のもと退職金の支払いを行う必要があります。後に不当解雇であったと主張されるケースを防ぐ、または備えるため、この雇用条例を遵守するのはもちろんのこと、解雇に関する取り決めである会社の就業規則や雇用契約書の内容を事前に確認し、さらには従業員との交渉に備えて、解雇時の支払い金額や条件などを検討し、そして合意書といった文書を締結することが望ましいです。

 

 

人員削減分の既存業務をどうカバーしていくか

解雇した人員が担っていた既存の業務を解雇後にどう対応するかもポイントになります。考えられる対応としては、

 

・香港社に残った従業員の誰かが引継ぐ、

・日本本社を含むグループ会社で引き継ぎ対応する、

 

ということになるかと思いますが、前者の場合であると一人の従業員の業務量が増えるため、また経営縮小という不安感も手伝い、離職してしまう可能性が高くなります。またグループ会社で対応する場合、商流の対応は別として、会計記帳や給与明細の作成、税務申告などバックオフィス関連の業務については、香港の会計基準、税法、雇用条例などの知識も必要となるため、専門会社へアウトソーシングするという選択肢も一般的です。またアウトソーシングの場合、従業員の離職などによる業務にムラが出ず、品質が保てるというメリットがあります。

 

 

 

B. ペーパーカンパニー化

これは、香港法人自体は残すものの、会社運営となる実体についてはなくしてしまうことを意味します。つまち現在香港社にいる全従業員を解雇し、さらにオフィス自体もなくしてしまい、香港社の運営については、日本本社やその他地域のグループ会社から完全に遠隔でオペレーションを行う方法です。

 

ペーパーカンパニー化にあたり考慮すべきポイントは、上述の香港社運営業務の一部をグループ会社へ移管するケースであるダウンサイジングと大体同じですが、それに加え2つあります。

 

 

ペーパーカンパニー化後の登記住所

オフィス自体をなくした後も、登記住所は香港内でなければならないため、どこを登記住所にするか検討する必要があります。一般的に、弊社のような専門事務所の住所を借りるという方法をとる企業が多くあります。

 

また2023年1月1日から施行された香港のオフショア受動所得の免除制度(FSIE制度)も重要な考慮ポイントとなります。ペーパーカンパニーの場合、これまでオフショア源泉のため非課税であった配当や利息といった受動的所得が、本制度により免除要件に当てはまらず、課税対象となるケースもあることに注意が必要です。

 

制度詳細については、弊社過去記事【香港】「香港外からの受動的所得」FSIE制度における申告実務についてをご覧ください。

 

 

 

シナリオ2:香港社を休眠にする

上述のようにダウンサイジングやペーパーカンパニー化をして、香港社を継続するほどビジネス状況が芳しくないが、今後の見通しが立たないためまだ香港社を閉鎖するという意思決定には至っていないという場合、香港社を一旦休眠会社にするという方法があります。

 

休眠会社とは、簡単にいうとビジネス活動を行っていない法人を意味します。正式休眠会社と自然休眠会社と2種類ありますが、注意しなければならないのは、どちらも「休眠」状態にしたからといって何もしなくていいというわけではありません。

 

休眠会社が対応すべきことについては、弊社過去記事【香港】ビジネスが行われていない香港会社の税務申告とはをご覧ください。

 

 

 

 

シナリオ3:香港社を閉鎖する

残念ながら今後いい展望が見込めないという場合、香港社を閉鎖し、香港から撤退するという決断にたどり着く企業もいらっしゃいます。

 

一般的な閉鎖手続きとしては、登記抹消、株主による任意清算、債権者による任意清算と3つの方法があり、企業の状況によって最適な手続きは異なります。この中で登記抹消が容易な閉鎖方法となります。閉鎖手続きにおいて場合によっては、上述のダウンサイジング化、ペーパーカンパニー化、休眠化より煩雑な手続きが必要になる場合があるので、こちらも事前に入念な確認が必要になってきます。

 

香港社の撤退については、弊社過去記事香港法人の閉鎖・撤退の方法をご覧ください。

 

 

 

 

 

終わりに

香港でのビジネス状況が厳しいとき、企業はすべてのシナリオを想定しなければならないと思いますが、どれが最適であるかを決断するのは容易なことではありません。

 

弊社にて、今後の形態のご相談、また実行時のサポートも可能でございますため、お気軽にお問い合わせください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
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