香港法人の取締役就任について
例年4月は日本の新年度にあたるため、海外現地法人である香港法人において、日本から出向された駐在員の方の入れ替わりが多くなる時期です。そのため、この時期において、取締役として就任されていた駐在員の方が帰任されるのであれば取締役を辞任し、そして新たに赴任された駐在員の方が取締役に就任されるケースが多く、日々の取締役変更にかかる登記業務に関するお問い合わせをよくいただきます。
今回は、そんな香港法人の取締役任命の条件や必要情報、留意点等をご紹介させていただきます。
香港法人の取締役任命の条件
会社条例における取締役任命条件は以下となります。
- 年齢制限:18歳以上
- 国籍の制限なし
駐在員の方が取締役となるケースも多いですが、必ずしも取締役は香港在住である必要はないため、日本本社の役員の方が香港法人の取締役を兼務されるケースも多くあります。
また会社法における香港法人の取締役任命の数として、最低1名の自然人(個人) を任命する必要がありますが、定款で2名以上などの規定をされている場合は、会社定款の規定に従う必要があります。
香港法人の登記上の役職と権限
香港法人の登記上の役職および権限については、以下のようになります。
- 会社登記所への登記は一律“Director”のみ
- 取締役全員に同じ権限がある
日本では会社法で「代表取締役」の権限について定められていますが、香港では会社法による「代表取締役」という定めや、登記上にそのような役職はなく一律取締役=“Director”となるため、登記上の取締役は全員横並びに同じ権限があります。
企業によっては、Managing directorなどで社内で役職を分けている会社もありますが、会社法ではDirectorとして登記されている以上同じ権限となるため、たとえ社内的に権限が認められていない取締役だとしても、会社の代表者としての責任が同等にあることに注意が必要となります。
取締役就任手続きにおける基本必要情報
取締役として就任される登記手続きにおいて、就任される取締役のID番号および居住住所の登記を行うことになります。
そのため、弊社へこの手続きをご依頼いただく場合ID番号は、パスポートに記載されているID番号または香港の就労ビザ取得後に発行される香港IDカードに記載されているID番号となるため、パスポートコピーまたは香港IDカードコピーをご提供いただくことになります。
また居住住所は、住所証明となる書類のコピーをご提供いただく必要があるため、有効な運転免許証や、3ヶ月以内発行の住民票、光熱費請求書、クレジットカードステートメント等をご提供いただくことになります。
取締役の個人情報保護について
基本的に登記された取締役の情報については、Annual Returnという日本での登記簿謄本のような書類へ反映されることになり、この書類は会社登記所のウェブサイトから有料で誰でもダウンロードすることができます。
そのため、上記のように居住住所が登記される事によって、個人の住所が一般公開される事に抵抗がある方も少なからずいらっしゃいます。
しかしながら香港会社登記所は、この取締役の個人データに関するプライバシー保護の強化のため、2022年10月24日より個人情報の「新検索制度」を導入することにしました。
これにより、2022年10月24日以降、会社登記所のウェブサイトにて一般公開されていた取締役の居住住所と全部表記されていたID番号については、居住住所が連絡先住所に置き換えられ、全部表示されているID番号は部分表示に切り替えられることになりました。
そのため、以降に会社登記所へ提出される文書に含まれる保護情報は、一般公開文書としての閲覧ができなくなり、特定の人物(公認会計士や弁護士事務所など) のみ、保護情報へのアクセスを会社登記所へ申請することで閲覧は可能となっています。
また連絡先住所は、一般的に香港会社の登記住所やご本社の住所などが登記されるため、従来より取締役の居住住所が記載され閲覧可能であった情報が保護される事になっています。
取締役変更登記の提出期限について
取締役就任登記フォームは、取締役就任有効日より、原則15日以内に提出する必要があり、この期限を守らなかった場合は、罰則金25,000+700/日が課せられる場合があるので注意が必要です。
弊社グループでは、今回紹介させていただいた取締役登記を担う会社秘書役員業務も提供しておりますので、登記手続きなど代行手続きをご依頼先をご検討されている方は、是非ご相談ください。
また、新たに就任される取締役が香港で会社運営をする上で、最低限知っておかなければならない事を、分かりやすく解説させていただく取締役セミナーを現在無料でご提供させていただいておりますので、当セミナーのお申込みをご希望の方も、ぜひお問い合わせ下さい。
【参考URL】
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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