外資系香港企業の香港を拠点とすることに関する調査報告 (2023年)
- 公開日 2024.03.29 | 香港
毎年6月1日に、香港政府の統計局により、香港域外企業(親会社が香港外にある外資系香港企業)に対して香港を拠点としたビジネス概要について、任意のアンケート調査が行われます。
この度、2023年度の調査結果が発表されたため、今回はその内容についてご紹介いたします。
調査結果のハイライト
- 香港外に親会社を持つ香港拠点は9,039社あり、2022年度と比べ、61社が増加した。また内訳は、1,336社が地域統括本部、2,311社が地域拠点、5,392社が現地拠点であり、総雇用者数は約468,000人であった。
- 親会社の主な所在地は、中国本土が最も多く(2,177社)、次いで日本(1,403社)、アメリカ(1,273社)、イギリス(641社)、シンガポール(477社)の順となった。
- 地域統括本部の数において、中国本土(247社)、次いでアメリカ(214社)、日本(206社)の順となった。
- 地域拠点において、アメリカ(419社)、次いで日本(411社)、中国本土(324社)となった。
- 現地拠点において、中国本土(1,606社)、次いで日本(786社)、第三位はアメリカ(640社)となった。
地域統括本部:香港+1カ所以上の香港外地域の拠点を管轄する権限を有する。
地域拠点:香港+1カ所以上の香港外地域の拠点を運営または連携する機能を有する。
現地拠点:香港内のみのオペレーション機能を有する。
日系香港企業の機能別拠点数の推移
過去6年の日系香港企業における機能別拠点数を比較した表がこちらです。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
総拠点数 | 1,393(15.9%) | 1,413(15.6%) | 1,398(15.5%) | 1,388(15.3%) | 1,388(15.5%) | 1,403社(15.5%) |
地域統括本部 | 244(15.9%) | 232(15.1%) | 226 (15.0%) |
210(14.4%) | 212(15.0%) | 206社(15.4%) |
地域拠点 | 421(17.4%) | 431(17.3%) | 427(17.2%) | 423(17.0%) | 402(16.8%) | 411社(17.8%) |
現地拠点 | 728(15.2%) | 750(15.0%) | 745(14.8%) | 755(14.8%) | 774 (15.0%) |
786社(14.6%) |
コロナによる規制が解放された2023年度は、総拠点数がようやくコロナ前の2019年と同レベルにまで回復しました。また機能別では、香港に地域統括本部を設置する日系企業の数において減少傾向が見受けられるものの、現地拠点については増加傾向にあります。(2023年度現地拠点数は786社で、2018年度から58社増加した。)
主な理由として考えられるのは、コロナ禍による長期的な入境規制により人及び貨物の流動に影響を与えたため、それが多国籍企業の地域統括本部として機能することが困難となったため、地域統括本部の拠点を、香港ではなくシンガポールなどの他地域が選定されるようになったことが挙げられます。
また一方で日系現地拠点数の増加については、世界的にも有名な高い香港のオフィス・店舗などの賃料が、コロナ禍の影響により低下したため、香港でビジネスを運営していく上でかかる大きなコストの一つが減少となり、また円安により、香港ドルでの配当が対日本円に換算した場合の増加などが影響したため、2023年度の拠点数が2022年より大きく増加した理由として考えられます。
外資系香港企業による香港ビジネスのアンケート結果
また、拠点数の統計以外にも、香港域外企業による、香港でビジネスを展開する上でのアンケート結果をまとめたものついてご紹介いたします。
- 香港に拠点を設置するメリットとして、シンプルな税制と低税率であると61%の会社が回答。またその他に、地理的な優位性(51%)、自由港の地位(50%)、情報の自由流通性(49%)も香港のメリットして挙げられている。
- 2023年における向こう3年間におけるビジネスプランでは、61%の会社が香港での業務を現状維持する予定であり、13%は業務拡大の予定となった。また、15%の会社はまだ未定であるとし、3%が香港での業務を一部またはすべてにおいて段階的に終了または移転する予定とした。
- 香港で業務を拡大すると答えた会社のうち、72%が従業員を増員する予定であり、51%の企業は既存の業務機能の範囲を拡大させる予定で、35%の企業は新たな業務機能を開発する予定であるとした。
- 2023年において、香港で業務拡大を計画中である企業の平均雇用人数は74人であり、一方で業務を段階的に終了または移転を計画中である会社の平均雇用人数は11人であった。
香港では、これまで「金融業」の一枚看板にて香港経済を支えてきましたが、現在は、技術イノベーション産業の発展に力をいれており、人工知能(AI)などの、新しいテクノロージーが日々誕生し、香港の経済環境にも変化が起きています。
また、優秀な人材や外からの資金を確保するため、香港政府は、引き続き外資企業や投資家へ、新しい産業など香港の魅力をアピールし、信頼を勝ち得るため、新たな優遇施策などの対応について注視していく必要があります。
2月28日に発表された、最新の香港2024/25年度財政予算案に関する概要及び今後の見通し・見解についてはこちらの記事にまとめておりますのでご参照ください。
もし香港でのビジネス進出・事業拡大・撤退・移転・組織再編などについて、ご不明な点がございましたらコチラからお問い合わせください。弊社の各種専門的なアドバイスについて提供させていただきます。
【参照元】
Report on Annual Survey of Companies in Hong Kong with Parent Companies Located outside Hong Kong
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
免責事項:
- 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
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