香港での会計資料および登記資料の法定保管規定について
弊社のクライアントから、香港での会計資料の保管年数や保管方法に関するお問い合わせをいただくことが多くあります。
今回は、そんなよくある質問の会計資料の保管方法と登記資料の保管方法をあわせて、香港での法定規則と共に紹介させていただきます。
Contents
会計資料の保管方法について
香港での会計資料の保管について、「必ず原本での保管が必要ですか?」という質問をよく頂きます。香港の法令では、入出金の証憑書類(銀行ステートメントや小切手台帳等)を含めた会計資料の原本をスキャンしたデータの保管が、法令で認められています。
また、最近日本では電子帳簿等保存制度が改正され、ますますデジタル化が進んでおりますが、香港ではスキャナ保存資料に対するタイムスタンプ付与のような要求はありません。
会計資料の法定保管期間について
会計資料や登記資料の保管期間の根拠となる条例については様々ありますが、一般的に採用される香港での会計資料の保管期間は、決算日より最低7年間となります。
この7年間というのは、香港税務局が、当年度を含む過去7ヵ年度の申告まで遡及して課税する権限を持っているため、過去年度の申告において、課税漏れを防ぐために、納税者である各企業に、インパクトの大きな費用や何か疑わしい事項などに関連した質問状を発行する場合があるため、最低7年間分の会計資料の保管が法令で要求されております。
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また、合理的な理由なく法令の要件に従わない場合、最高100,000ドルの罰金が科せられる可能性があるので、注意が必要です。
7年以上前の会計資料の提出を求められるケース
税務上の累積損失が7年以上前から繰り越されている場合は、損金計上された経費の精査(課税対象となる利益を生み出すための必要経費であったかどうか)を行うために、7年以上前の課税年度の申告に対しても遡及して調査する権限を持っているため、注意が必要となります。
また、契約書の保管期間についても注意が必要です。仮に、最長遡及期間である7年前の帳簿に計上された取引において、その取引に関連する契約の締結日が、さらに3年前のものであれば、その契約書については引き続き保管しておく必要があります。
このような例外となるような関連資料を提出できないケースもあることから、保守的に備えるためには、7年+2~3年の保管が推奨されるともいえます。
登記資料の法定保管期間について
会社の登記資料については、会社が存続している間は、設立からの書類は全て常に保管しておく必要があります。
もしも登記抹消(Deregistration)という形で会社を清算した場合は、解散後20年間は、登記復活される可能性が存続することから、20年間の保管が必要となります。
会計資料・会社の登記資料保管期間関連条例一覧表
会社条例377(2)条: | (会計資料)決算日後7年間 | Cap. 622 Companies Ordinance ─ Section 377(2) The company must preserve the records, or the accounts and returns, for 7 years after the end of the financial year to which the last entry made or matter recorded in the records, or the accounts and returns, relates. |
会社条例758(1)条: | (会計資料)解散完了日から少なくとも6年間 | Cap. 622 Companies Ordinance ─ Section 758(1) If a company is dissolved under this Part or section 226A, 227, 239 or 248 of the Companies (Winding Up and Miscellaneous Provisions) Ordinance (Cap. 32), every person who was a director of the company immediately before the dissolution must ensure that the company’s books and papers are kept for at least 6 years after the date of the dissolution. |
会社条例627(5)条: | (登記簿謄本)元株主による関連資料は、株式譲渡後(株主でなくなった時点)から最低10年間保有とされている。 | Cap. 622 Companies Ordinance ─ Section 627(5) (5)In the case of a person mentioned in subsection (2)(c), all entries in the register relating to that person on the date on which the person ceased to be a member may be destroyed after the end of a period of 10 years from that date. |
会社条例618(2)条: | (登記資料)取締役・株主などによる議事録、決議書等は、決議日から最低10年間保有すべきとされている。 | Cap. 622 Companies Ordinance ─ Section 618(2) A company must keep the copy, minutes or written record under subsection (1) for at least 10 years from the date of the resolution, meeting or decision, as the case may be. |
会社条例760(3)条: | (登記資料)解散後20年間は、登記復活される可能性が存続することから、20年間保有されるべきと理解される。 | Cap. 622 Companies Ordinance ─ Section 760(3) An application must be made within 20 years after the date of the dissolution. For this purpose, an application is made when it is received by the Registrar. |
税務条例51C(1)条: | (会計資料)決算日後7年間 | Cap. 112 Inland Revenue Ordinance ─ Section 51C Subject to subsection (2), every person carrying on a trade, profession or business in Hong Kong shall keep sufficient records in the English or Chinese language of his income and expenditure to enable the assessable profits of such trade, profession or business to be readily ascertained and shall retain such records for a period of not less than 7 years after the completion of the transactions, acts or operations to which they relate. (Amended 7 of 1986 s. 12) |
弊社では、上記のような香港の一般的な税務に関するご質問だけでなく、日々の運営における会計や法務・労務等に関する一般的な質問・疑問にお答えする顧問サービスを提供しております。お困りの点がございましたら、ぜひ青葉へお問い合わせ下さい。
【参照元リンク先】
香港税務局(IRD)サイト – Record Keeping
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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