越境貿易投資の利便性促進改革に対する更なる深化に関する国家外貨管理局による通知【ニューズレター Vol.95】
本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として、青葉グループの広東省広州市天河区に拠点を構える弁護士事務所より作成しております。
Contents
【背景】
中国共産党中央委員会と国務院の決定・配置を徹底的に実行し、越境貿易投資の利便性を更に促進し、実体経済に貢献する外貨管理能力を確実に向上させるため、国家外貨管理局は、市場関係者が越境貿易と投資業務をコンプライアンスに基づいて処理できるようにし、開放性が高く質の高い発展を促進するよう、外貨管理の改革を更に促進することを決定した。
【影響】
外貨管理の改革を深化させ、越境貿易投資のパイロット地域の範囲が拡大され、越境貿易及び投資と融資の円滑化レベルを向上させ、より多くの外国金融機関と長期的な資本を中国に誘致し、企業に対する為替リスク管理サービスを改善し、銀行が為替リスク管理において企業に健全なサービスを提供するための長期的なメカニズムの構築を促進する。
【主要内容】
一、貿易における外貨決済の利便性向上
(一)市場調達貿易[1]の外貨管理の最適化
国内市場で調達後、第三者に委託し通関して輸出する企業が、自社の名義で代金を受け取る場合、以下の条件を満たすものとする。
1. 国内市場で調達した企業は、すでに地方政府の市場調達ネットワーキングプラットフォームに届出をしている。同ネットワーキングプラットフォームは、取引と輸出の全過程に関する情報を記録し、企業に輸出明細データを提供する機能を有していなければならない。
2. 取引を取り扱う銀行は、市場調達取引ネットワーキング・プラットフォームとシステムの紐付け若しくはログイン等、その他必要な手段を通じて、企業の実態や取引の真実性を審査し、取引情報が重複して使用されることを防止する。
[1] 「市場調達貿易」とは、認可を受けた業者が国家商務部門などが認定した商業集中区域内で調達した商品について、通関1件あたりの商品価格が15万米ドル以下のものを、調達地で輸出通関を行う一種の簡便な貿易方式を指している。参考リンク
(二)加工貿易の収支差額決済の緩和
企業の輸出入代金相殺決済、即ち輸出製品の代金と輸入材料の代金を相殺した差額後の決済を行う銀行は、以下の条件を満たすものとする。
- 企業は海外の取引相手から材料を購入し、加工後の製品を同一の取引相手に販売する。
- 企業が輸出入代金の相殺決済を実施する前に、関連資料を持参し銀行で説明を行い、銀行が貨物貿易外貨監視システムの主体標識機能を利用して「輸出入代金相殺決済を行う企業」の標識を加える。
- 企業は合理的に相殺の周期を設定し、適時に売掛金と買掛金を精算・決済する。原則的に少なくとも四半期に1回とする。
銀行は、事業展開の原則に基づき、企業の決済業務の正確性・合理性を審査した上で「輸出入代金相殺決済を行う企業」と表示された企業の輸出入代金相殺決済の手続きを行い、要件(申告要件は別添1を参照)に従い、入送金の実績データ及び復元データの申告を行うこと。
(三)委託代理店による越境貿易資金の出入金の改善
代理人が倒産、銀行口座凍結等の状況により、貨物貿易の入金・送金の実行ができなくなった場合、銀行は事業展開の原則に応じて、入金・送金の真実性と合理性を審査した上で慎重な判断の基、委託者に代わって入金・送金の手続きを行うことができるものとし、外国収支申告の備考欄に「非通関者+委託者入送金+○○○(代理人名称)」と記載する。
(四) 国内企業のオペレーティングリース業務における外貨決済の利便化
国内機構(以下「借手」)が自社保有の外貨を国内リース企業(以下「貸手」)へ国内オペレーティングリース(飛行機、船舶、大型設備)の代金としてリース料を支払う際に、以下の条件を満たすものとする。
- 借手は安定的な外貨収入源があり、外貨収入はある程度の規模を満たすこと。借手の年間外貨リース料の支払い額は原則1億米ドルを下回らず、且つ合理的な支出であること。借手は、貿易外貨決済便利化の優良企業として認められていること。
- 貸手のリース物件購入資金の50%以上が外貨建て債務によるものである、または、貸手が海外からリースしたリース物件において外貨で代金を支払う必要がある。貸手が取得した外貨リース収入は原則として元転して使用しなくてはならず(国内の税金納付、または登記抹消に使用する場合を除く)、また、海外の賃貸料の支払い、外貨建て債務の返還、海外へのリース品の支払い、外為管理局の規定に基づいたその他の外貨支出に使用できる。
銀行は、事業展開の原則に従い、事業の真正性・合理性を審査した上で、国内オペレーティング・リースの外貨建賃借料送金業務について取り扱う。借手は、「国内送金申込書」等の書類の取引備考欄にオペレーティング・リース契約番号を記入し、且つ「外貨建賃料支払」と記載する。貸手は、「国内所得申告書」等の書類の取引備考欄にオペレーティング・リース契約番号を記入し、「外貨建賃料受取」と記載する。
二、資本項目便利化措置の拡大
(五)越境融資便利化政策の試行を全国的に推進する
中小企業の科学技術イノベーションをさらに支援するため、科学技術系の中小企業を越境融資便利化措置の試行対象として追加する。
天津市、上海市、江蘇省、山東省(青島市を含む)、湖北省、広東省(深セン市を含む)、四川省、陝西省、北京市、重慶市、浙江省(寧波市を含む)、安徽省、湖南省、海南省(市)の管轄下にある適格なハイテク、または「専門的、特殊的、革新的技術」を持つ企業及び科学技術系の中小企業は、最大1,000万米ドル相当の外債を単独で借りることができる。
その他地域の適格なハイテク、または「専門的、特殊的、革新的技術」を持つ企業及び科学技術系の中小企業は、500万米ドルを限度として、単独で外債を借りることができる(実施詳細規則については別添2を参照)。
(六)海外直接投資(ODI)の事前費用規模の制限を緩和
国内企業による海外直接投資のための事前費用累計送金額の上限300万米ドルという制限を撤廃する。ただし累計送金額が、中国側が行う投資予定総額の15%を超えてはならない。
(七)外商投資企業(FDI)の国内再投資項目の持分譲渡資金及び国外上場調達資金の資本金支払いと使用の便利化
資本項目現金口座を、資本項目決済口座(関連する勘定統合計画は別添3を参照)に変更する。国内持分譲渡人(機関や個人を含む)は、国内企業が外貨で支払った資本移転対価資金や、海外上場の国内企業が調達した外貨資金を、資本項目決済口座に直接送金することができる。
資本項目決済口座にある資金は、独自に外貨決済として使用することができる。 国内持分譲渡人が外商投資企業から持分譲渡対価として受け取った資金を外貨決済に由来する人民元資金(直接外貨決済により受領した人民元資金または外貨両替済みで未入金の人民元資金)で支払った場合、国内持分譲渡人の人民元口座に直接送金することができる。
三、資本項目にかかわる外貨管理の改善
(八)資本項目の収入の使用に関するネガティブリストの管理を改善する
非金融企業の資本金、外債等の資本項目下の外貨入金及びその元転資金の使途において、真実性と自己使用の原則に則り、直接・間接を問わず、国の法律法規に禁止する支出に使用してはならない。また、明確な規定がある場合を除き、次の用途にも使用してはならない。
・直接または間接的に証券投資或いはその他の投資財テク用途(リスク評価二級以下及び仕組預金を除く)に使用してはならない。
・非関連企業への貸付に使用してはならない。(経営範囲に明記され許可されている場合、及び中国(上海)自由貿易試験区臨港新区、中国(広東)自由貿易試験区広州南沙新区、中国(海南)自由貿易港洋浦経済開発区、浙江省寧波市北侖区などの4地域で明示的に認められている場合を除く)
・自己使用以外の住宅性不動産(不動産開発、不動産リース経営の企業を除く)に使用してはならない。
(九)他の地域での外債口座開設認可の取り消し
非金融企業は確かな合理的な必要性がある場合、所在地の外貨管理局以外の地域の銀行で外債口座を開設することが可能である。
銀行がより多くの優良企業を資本勘定所得決済の便利化の範囲に含めることを奨励する。企業の実際のニーズに従って、越境投融資商品と為替リスク管理商品をさらに充実させ、業務プロセスを最適化する。業務発展の原則に従って、顧客のデューディリジェンスをしっかり行い、科学技術手段を用いて事後監視を強化し、コンプライアンスに則った越境投資融資のために、より便利で効率的な越境資本決済サービスを提供する。
異常で疑わしい状況が発見された場合、適時に報告する。国家外貨管理局の各支局は、上記業務に対する監督・検証・検査を強化し、銀行・企業がコンプライアンスを遵守して業務を遂行するよう指導する。
本通達は発行日から実施される(その内、第七項は2024年6月3日から実施される)。 従来の規定が本通達と矛盾する場合、本通達が優先するものとし、改正規定の詳細は別添4に記載されている。国家外貨管理局の各省(市)の支局が本通達を受領した場合、管轄下の本土(市)の支局、都市商業銀行、農村商業銀行、外資銀行、農村合作銀行に速やかに本通達を転送するものとする。
【法規リンク】
「国家外貨管理局による越境貿易投資の利便性を促進するための改革をより一層深化することに関する通知」
.
AOBA法律事務所代表弁護士のご紹介
免責事項:
-
本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
-
Aobaグループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
-
法律法規の解釈や特定政策の実務応用及びその影響は、それぞれのケースやその置かれている状況により大きく異なるため、お客様各社の状況に応じたアドバイスは、各種の有償業務にて承っております。
-
本文は国際的、業界の通例準則に従って、Aoba Business Consultingは合法チャネルを通じて情報を得ておりますが、すべての記述内容に対して正確性と完全性を保証するものではありません。参考としてご使用いただき、またその責任に関しましても弊社は負いかねますことご了承ください。
-
文章内容(図、写真を含む)のリソースはインターネットサイトとなっており、その版権につきましては原作者に帰属致します。もし権利を侵害するようなことがございました際は、弊社までお知らせくださいますようお願いいたします。
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。