香港法人設立 ~ 初めての決算、法人税(企業所得税)申告について
- 公開日 2023.09.29 | 香港
コロナによる入境制限が解除された現在の香港経済は、世界的な経済環境の厳しさにより外部需要が弱い状態となっているものの、インバウンド観光や個人消費により徐々に回復基調となっております。
日々、青葉グループへ寄せられるお問合せにおいても、コロナ禍では会社清算のご相談が多くございましたが、最近ではコロナ前のように、香港進出のため香港法人設立を検討される日系企業様からのお問い合わせも多くいただいております。
今回は、そんな香港進出を検討されている方々の参考として、香港における法人設立から、設立後初めての決算、そして法人税(企業所得税)申告迄の流れと留意点について、ご紹介させていただきます。
Contents
香港進出の組織形態について
香港進出の組織形態として(1)有限公司、(2)支店、(3)駐在員事務所など様々な組織形態での進出が考えられます。今回は、その中でもっとも採用されている(1)有限公司、いわゆる香港現地法人の設立~法人税申告に焦点をあててご紹介します。
(関連記事:【香港進出】法人・支店・駐在員事務所 最適解を選ぶために)
香港法人設立について
香港法人設立にあたり、 会社名、会社の登記住所となる香港域内の本店所在地住所、営業目的、 資本金、株主情報、取締役情報等の情報が最低限必要となります。
また、香港では会社法上、会社秘書役員(Company Secretary)と呼ばれる会社の法定書類の作成、登記、保管を司る役員の任命が義務付けられております。
香港における法人の設立は比較的容易で、法人設立にかかる期間として、一般的に2~3週間で設立が可能です。
会計監査について
日本では、特に上場企業など一定の企業に義務付けられている会計監査についてですが、香港では、会社の規模に関わらず全ての有限会社は、香港の公認会計士により法定会計監査を受ける必要があります。
(関連記事:香港法人が必ず受けなければならない会計監査とは参照。)
決算について
香港では、香港法人設立日から18ヶ月以内に最初の決算を行う必要があります。
例えば、設立日が2022年12月31日の場合は、18ヶ月(2024年6月30日迄)以内に最初の決算を行う必要があります。(2年目以降は、初年度に決めた本決算日までの1年間を1会計年度として毎年決算を行うことになります。)
流れとしては、設立日~決算日迄の監査前の決算書を作成した後、法定監査を受け、監査後の財務諸表数字に基づき法人税申告を行います。通常、一定レベルの在庫を保有していれば、決算日時点にて監査人が立ち会って在庫の実地棚卸を行う必要があります。
初年度の法人税申告スケジュール
通常設立日から約18カ月前後に税務局より最初の法人税申告書が発行され、発行日から3ヶ月以内に税務申告を行う必要がございます。
もしも2024年6月頃に申告書が税務局より発行された場合は、3カ月後の2024年9月頃が申告期限となります。ただし、会計事務所をを税務申告代表者として任命している場合、延長申請を行うことで、通常の税務申告の締め切り日(以下表)まで、税務局の判断により延長出来る場合もあります。
*注意点:初年度から利益が発生した場合
万が一、初年度に決めた決算日時点で課税対象利益が出ており、上記の法人税申告書がまだ発行されていない場合は、発行されるまで待つのではなく、決算日より4ヶ月以内に税務局へ課税対象利益発生の通知を行わなければなりません。そして、通知後に発行された法人税申告書にて申告を行うことになります。。
当通知が遅れた場合は、一定の罰則金に加え課税金額の3倍が追徴される可能性があることにご留意ください。
設立年は傾向として費用が多く出費してしまっているので、課税対象利益は発生しないだろうと想定されていたとしても、設立関連費用は資本的性質の支出とみなされ損金不算入処理となる為、いざ監査済みの財務諸表にて、税金計算をしてみたら税務上経費として落ちない費用が多く、結局課税対象利益が発生してしまった等のケースも少なからずございます。
そのため、決算日時点で課税対象であるかどうかに関わらず、利益が発生している場合は、法定監査・税務申告について、早目に実施されることをお勧めいたします。
次年度以降の法人税申告スケジュールについて
次年度以降の法人税の申告期限は、会社の決算日によって設定されています。
通常、毎年4月~5月にかけて税務局より法人税申告書が発行され、その年度に対する申告書の場合、下記の2つの条件をどちらとも満たしている会社であれば、法人税申告期限は以下表の通りとなります。
条件①:税務申告代行業者を任命している。
条件②:IRDが会社の決算日を把握している。
本決算月 | 税務申告期限 |
1〜3月 | 11月15日 |
4〜11月 | 4月30日 |
12月 | 8月15日 |
通常、申告期限日から約2ヶ月程度で、法人税の査定書兼納税通知書が発行され郵送されることになります。 法人税の支払いは、基本的に2回に分けて支払うことができ、1回目は納付合計額の75%、残り25%が2回目の支払額となります。 (※決算月が4~11月の会社の納付は一括払いとなります)
*注意点:
①法人税申告後の決算日の変更について
申告後次年度以降の決算日は、特別な理由(本社の決算日とあわせる等)が無いかぎり基本的には変更する事ができないので注意が必要です。
②過去年度の申告書について
課税対象利益が発生していないなど、法人税申告書が発行されないことがあります。しかし、税務局はその申告書が発行されていなかった、過去の年度に対して突然申告書を発行してくることもあり、その場合は、税務申告期限は上記表ではなく、発行日から1ヶ月以内と定められています。
弊社グループでは進出時の必要な取締役人数や資本金は?といった会社設立に関するアドバイスから設立後の給与計算や会計記帳等の会社のオペレーションにかかるアウトソーシング業務、法定により必要な会社秘書役、監査税務申告まで全てワンストップにてお手伝いをさせていただいております。お困りの点がございましたら、ぜひ青葉へお問い合わせ下さい。
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
免責事項:
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