香港の中小監査法人の手抜きが、金融センターとしての地位を損なう恐れがあると指摘
【この記事のハイライト】
・香港の小規模会計事務所は手抜きをし、過去の失敗から学ぼうとせず、国際金融センターとしての香港に対する市民の信頼を損なう可能性がある、と規制当局幹部が指摘した。
・会計業界からの議員であるウォン氏は、中小監査法人は優秀な人材の確保が困難であることが多いと指摘した。
・米国に上場している本土系企業の上場廃止リスクが低減された。
Contents
中小監査法人の監査の質は低く、改善する姿勢がみえない
香港の会計監視委員会は、香港の中小監査法人を非難し、グローバルな金融セクターとしての香港の地位を危うくしかねない不正行為を行っていると非難した。
会計・財務報告審議会(AFRC)の検査責任者であるライ氏によると、中小監査法人(一般的に対象企業が上場企業100社未満/年の監査法人が含まれる)は、残念なことに手を抜く傾向があり、「過去の過ちから学ぶ」ことを怠り、「監査の質を低下させる」「容認できない態度」を示していると述べ、「これらの会計事務所には大きな改善の余地がある」と述べた。
一部の会計事務所における過去3年間の年次検査で欠陥が再発しており、以前の検査結果から十分に学んでいないとし、その原因ほ一つとして客観性を損なったり、手抜きをしたりすることで監査の質を落とそうとする姿勢であり、それは容認できず、またこれは、国際金融センターとしての香港の財務報告の質に対する市民の信頼に深刻な影響を与える可能性があると見解を示した。
1万人以上の公認監査人からなるこの業界に対する、このようなAFRCの厳しい評価は、米国と中国との間で長年続いている監査紛争において、AFRCが中立の立場を表明しているときにも行われている。
AFRCの共同主催者であるケルビン・ウォン・ティンヤウ会長は、問題の小規模監査法人が今後数年間改善されない場合、同監視委員会は懲戒委員会に提訴し、罰則を科す可能性があると述べた。
中小監査法人は、人材確保が難しく足かせとなっている
この批判に対し、香港で小規模の会計事務所を経営する会計業界の議員であるウォン氏は、「中小規模の会計事務所は優秀な人材の確保が難しいことが足かせになっており、また中小会計事務所も大きな案件の監査人になりたいと思っているが、より複雑な仕事に必要な人材を確保するのは容易ではないかもしれない」とウォン氏は述べた。
そしてさらに、「この問題を解決するために、政府はより多くの人材を育成し、すべての会計事務所が十分な人材を確保できるようにすべきです。また、小規模の会計事務所は、他の会計事務所とパートナーシップを結び、人材プールを充実させる、という方法も考えられる。」とも述べた。
中国本土系企業の監査に必要な書類引き渡しの促進
中国の国家機密に関する広範な法律は、企業の監査書類にも適用されており、現在、監査人が海外の規制当局の検査のためにそのような書類を国外に持ち出すことを禁止している。
しかしウォン氏によると、香港の規制当局が4月に北京で中国本土の当局者と会談し、中国財政部(財務省)が今後、監査調査に必要な書類をよりタイムリーに香港の会計規制当局に引き渡すことで合意したという。
「本土の規制当局が私たちに最初の書類を渡すのに11ヶ月かかった。今後、移管にかかる時間は大幅に短縮されるでしょう」とウォン氏は語り、香港と本土の監視当局は、香港に拠点を置く会計事務所が本土企業の会計を担当する監査における不正の疑いに関する調査において、国境を越えた協力に引き続き取り組むと述べた。
米国に上場している中国本土企業の監査法人の評価について
Post紙は3月、公開会社会計監視委員会(PCAOB)の幹部が香港を訪れ、デロイトとEYと会議を開き、米国に上場している中国企業の監査について評価するため、年明けの検査に備える予定だと報じた。
ウォン氏は、米国の監査監督当局が最近香港で開いた会合について、「他の規制当局の仕事についてコメントすることはできないが、私が言えることは、海外のどの規制当局も(海外上場企業の監査人について)香港で定期的な検査を行う自由があるということだ」と述べた。
2020年12月に成立した米国の外国企業説明責任法(HCFAA)に基づき、すべての米国で上場している外国企業の監査人はPCAOBの検査規則を遵守する必要がある。その結果、本土に拠点を置く米国に上場した本土系企業168社が上場廃止の可能性に直面した。
しかし、昨年8月、財務省、中国証券監督管理委員会(CSRC)、PCAOBが、香港で監査調書の検査を実施することで合意し、昨年9月から11月にかけて、香港のPwCとKPMGのオフィスで第1回目の検査が実施された。
アメリカの監視機関は12月、米国に上場している本土企業の監査法人を検査することを許可されたと発表したため、多くの監査法人が抱えていた上場廃止のリスクが取り除かれた。
【参考記事】
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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