香港4月の税務季語”Employer’s Return”(雇用主支払い申告書)
2023年になったと思ったら、もう3月も半分が過ぎてしまい、時間の速さを感じてしまう今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
さて、3月末は香港の税務上においても年度末ですので、今年度もそろそろ終わりが近づいております。
4月1日から新年度を迎えることになりますが、そうなるとまず香港税務局は、在香港企業に対して2022/23年度の所得に関する申告書を発行してきます。その中に、Employer’s Returnが含まれているため、雇用主として個人所得に関する申告の対応をしなければなりません。この対応を経験をしたことがある方であれば、このEmployer’s Returnは、スピーディーかつ正確な対応が必須だということを痛感されていらっしゃるのではないかと思います。
新年度で何かと忙しく、バタバタしてしまう中でもスムーズに進められる参考情報として、今回はこのEmployer’s Returnついてお話しさせていただきます。
Contents
そもそもEmployer’s Returnとは?
香港において個人所得税は、日本のように会社が源泉徴収し確定申告を行うのではなく、従業員である各個人が申告および納税を行う必要がありますが、まずは各雇用主によるEmployer’s Returnの提出が第一ステップとなります。
Employer’s Returnとは、香港税務局が毎年4月第一営業日より在香港企業に対して発行する雇用主支払申告書 (Employer’s Return / 通称 BIR56A, IR56B) のことです。この申告書へ、雇用主は4月1日~3月31日までの期間において各従業員へ支払った報酬金額を記入して税務局へ提出しなければなりません。
また、その提出期間は短く、申告書の発行から原則1か月以内に行わなければなりません。(*税務局の発表によると、2023年は4月3日(月)に申告書の発行が開始されるようです。)
※昨年度までは、新型コロナウイルスの影響により提出期限が例年よりも延長されました。しかし今年は、各規制が緩和されたことにより期限の延長はないと考えられるため、1か月以内という提出期限には十分ご注意ください(ただし、税務代行業者を通して企業が個別で延長申請をする場合は異なります)。
雇用主支払申告書:BIR56AとIR56Bってなに?
BIR56A
BIR56Aは、報告対象となる従業員の人数を記入するフォームです。対象者がいない場合でも、いない旨を記入し、税務局へ提出する義務があります。
( 香港税務局HP:BIR56A記入サンプル)
IR56B
IR56Bは、報告対象となる従業員がいる場合、その従業員ごとの個人情報・雇用形態・当年度の4月1日~3月31日までの総支給額(海外で支払われた給与・賞与を含む)などを記入するフォームとなります。
(香港税務局HP:IR56B フォーム)
※雇用主は、各従業員の労働場所が香港内外に関わらず、BIR56AおよびIR56Bの提出が必要なことに注意してください。
当年度の途中で、退職者・解雇者がいる場合は?
従業員が退職や解雇した場合の報告は、この4月のEmployer’s Returnと一緒に報告するのではなく、従業員が退職する前に、各雇用主は一定期間内に退職届(IR56FもしくはIR56G)を、税務局へ提出して報告を行う義務があります。
- IR56Fは従業員が退職後も香港に継続して滞在する場合のフォームで、従業員の退職1か月前までに提出します。
- IR56Gは従業員が退職後に香港から長期もしくは永久に出国する場合のフォームで、従業員の出国する1カ月前までに提出します。
IR56FおよびIR56Gの提出により報告を行った元従業員(退職者・解雇者)について、IR56B提出の必要はありません。
雇用主支払申告書(BIR56AおよびIR56B)の提出後
企業が雇用主として各従業員の報酬内容を申告したあと、5月になると、今度は各従業員の個人宛に個人所得税申告書(フォームBIR60)が税務局より発行されます。
この申告書は、上述の雇用主から申告したIR56Bの記載内容と相違があった場合、税務局から質問状(税務調査)が発行される可能性があるため、雇用主は申告する前に従業員へ56Bのコピーを渡し、従業員と報酬内容を事前に確認しておくことをお勧めいたします。
*前年度中に転職をされた方は、個人所得税申告書(フォームBIR60)記入のために、前雇用主と現雇用主の両方からIR56Bのコピーを受け取り、その内容を記入する必要があります。
また、個人所得税申告書も、発行日から1か月以内が提出期限となります。
最後に
Employer’s Returnは、一度従業員がいない旨を申告したあとは、毎年4月に発行されるのではなく、数年に一度税務局から発行されることになります。4月に発行されても、数年に1度発行されたとしても、従業員がいてもいなくても、発行された限り、雇用主の義務として必ず申告しなければなりません。
税務局は、不正確な申告内容や提出に遅延があった場合、罰則金等を課してくる可能性があるため、冒頭でも述べたように、スピーディーかつ正確に対応する必要があります。
青葉グループでもEmployer’s Return申告代行サービスを提供しておりますので、自信がない場合やご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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