【中国】土地使用権の期限を迎えた場合の対応について
早いところでは1970年代後半から中国へ進出されてきた日系企業の中には、当時工業用地として購入した「土地使用権」がそろそろ期限を迎え始めるケースが出てまいります。そのため、いずれやって来る満期の際の対応について、弊社にもご相談いただくケースがここ最近増えてきております。
土地使用権の満期以降も、引き続き工場を運営される意向の企業もあれば、満期到来を機に、工場を畳み撤退をご検討されている企業もいらっしゃいます。いずれにしましても、事前のプランニングや準備を行っておく必要があるため、今回はその一助として、この中国特有の「土地使用権」について、お話しいたします。
patrick gantzによるPixabayからの画像
土地使用権とは:
中国では全ての土地はエリアによって、国または農民集団により保有されているため、その土地を個人や法人が購入し所有することができません。そのため、個人や法人に対しては、あくまで所有者が保有する土地を使う権利、つまり「土地使用権」を購入し、使用が認められることになります。土地登記弁法によると、国が保有する土地の使用権は大きく下記の2つに分けられます。
- 割当土地使用権(都市部の公共利用目的等のため使用。使用年数制限がない。)
- 有償払い下げ土地使用権(都市部の民間企業等が使用。使用年数制限がある。)
外資企業(日系企業など)の場合:
通常、外資企業が土地使用権を購入して、工場運営を行う場合は、後者の「有償払い下げ土地使用権」を購入することとなります。中国国務院による「中国国有土地使用権譲渡、賃貸の暫定条例」(1990年公布)によれば、土地使用権の期限はそれぞれ、
・住宅用地が70年、
・工業用地が50年、
・商業用地が40年、
・その他総合用地が50年
と定められています。
また、中国では「建物は土地に従い、土地は建物に従う」というルールがあり、その土地に建てられた建物は土地の一部として扱われ、別個の不動産としては扱われず、土地使用権が賃貸や譲渡される際には、その土地上の建物も土地に従うものとなります。つまり、建物のみを土地と分離して保有や売買することができません。そのため、工場などの運営においては、大きくは第三者が保有する土地及び建物を賃貸で使用するか、もしくは、「土地使用権」を購入し、そこに建てられた建物の保有、もしくは自らの建物を建設するということになります。
土地使用権の満期以降も、継続して同じ土地で工場を運営される場合:
引き続土地使用権の契約期間を新たに更新する必要がございます。
ただ、契約期間を更新するための方法については、国の統一的な細則がないために地方政府や専門家の間でも見解が分かれています。
一般的な見解として、まずは土地使用権期限が満期を迎えた場合、土地使用権保有者が当初結んだ土地使用権許諾契約において、「特約」がないか確認する必要がございます。特約とは、例えば、土地使用権満了時に土地・建物を政府または集団所有に戻すと合意している場合には、当該条項に従うといったものとなります。
土地使用権許諾契約にこのような特約がない場合、関連法規『城市房地産管理法(都市不動産管理法)』の第21条に則り、土地使用権許諾契約で合意した期間満了後も引き続き使用する必要がある(引き続き使用する意向がある)場合は、期間満了の1年前までに更新を申請し、更新が認められるものとなります。(*政府の開発政策など含め、公共利益のために土地を回収する必要がある場合などを除く。)
なお、更新の際は、新たな土地使用権許諾契約を締結し、規定に従って土地使用権許諾料を支払うものとなりますが、いくら支払うべき、どのような契約内容とするのかは、上述の通り、国としての統一基準がないために、政府との交渉によります。
土地使用権更新料の支払いについて:
土地使用権更新のための代金の支払いについてですが、都市部などに近いところでは土地使用権が50年前の購入時と比べ、数倍、中には十倍以上にまで跳ね上がっている場合もあり、企業にとってキャッシュフローに大きく影響する場合があります。
ただ、必ずしも当該土地の現在市場価格で更新されるというものではなく、政府によって定められる土地の金額(通常市場よりもかなり低い価格)を目安とする場合もあります。また、実際支払う更新料については、更新の際の代金から当初の土地使用権購入契約時に支払われた購入金額を差し引いた差額のみを徴収するなどの措置がなされるのではと考えらます。
いずにれせよ、国で統一された正式な基準が定められておらず、各地方・自治体の判断に任されるため、実際の手続き、対応については、管轄区の地元の政府に個別で問い合わせされることをお勧めいたします。もし、政府との交渉などにおいて、弊社での専門サービスが必要な際は、どうぞお気軽にお問合せください。
もしもお悩みであれば是非一度ご連絡ください。
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
免責事項:
- 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
- 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
- 法律法規の解釈や特定政策の実務応用及びその影響は、それぞれのケースやその置かれている状況により大きく異なるため、お客様各社の状況に応じたアドバイスは、各種の有償業務にて承っております。
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。