PE課税とは?香港に会社・支店がなくても課税されてしまう可能性
PE (Permanent Establishment, 恒久的施設)という単語を耳にしたことはあるけれど、明確になんであるかはよく分からず、PEは何か税金と関係しているものではないかという漠然としたイメージのみをお持ちの方が多いのではないでしょうか。今回の記事では、そんなPE課税とはなんなのか、PEにはどのような種類があるのかについて記載させて頂きます。
PE 恒久的施設
PE課税とは?
PEは上述の通り、Permanent Establishment (恒久的施設)の略で、企業が外国で事業を行う一定の場所などを指します。PEは税収協定締結国間で課税権を決めるための重要な指標であり、国際税務の大原則として「PEなければ課税なし」とされています。
例えば、外国法人が日本国内で事業を行っていても、日本国内にPEを有していなければ、基本的にその外国法人は日本で課税されません。
外国に支店を構えている場合は当然現地にPEが有しているとみなされますが、例え形式上はその様な事業形態をとっていない場合でも、現地の税務当局の判断により、実体としてPEを有しているとみなされるケースがあります。その場合、現地で事業所得税などを課せられる可能性があり、このような問題を「PE課税」と呼びます。
PEの種類
PEには以下の3つの種類があり、このうちのどれか1つでも該当する場合は、そのPEが生み出す所得が現地にて課税対象となります。
支店PE
事業の管理をする場所、支店、事業所、工場、作業場、鉱山、石油または天然ガスなど資源を採取する場所が該当します。ただし、資産の保管ならびに購入のみを行う場合、市場調査などの事業における補助的活動のみを行う場合などはPEとはみなされません。
建設PE
建設、据付け、組立てなどの建設作業・工事を12か月間を超えて行う場合が該当します。
代理人PE
非居住者や外国法人のために、現地で事業に関する契約を締結する権利を反復して行使する者、注文の取得や協議・交渉など事業における重要な部分を実行する者、などが該当します。ただし、仲立人や問屋など「独立した地位」を有する代理人はPEとはみなされません。
(*ここでいう「独立した地位」とは、代理人が法的、経済的に独立していて、代理人として行う行為が、自身の業務の一部である状態を指します)
PE課税の事例
具体的にPE課税が発生してしまった事例を挙げてみたいと思います。
- 香港に子会社、支店などの拠点を持たない日本企業が、香港にて機械設備の定期メンテナンスサービスを提供
- アパートを借りて、エンジニアスタッフを定期的に出張ベースで香港に送り、メンテナンスサービスを提供
- 顧客との契約は日本企業が直接行っており、日本企業の銀行口座へ対価が支払われる
このケースでは、日本企業は支店などの登記はしておらず、また契約も日本企業が直接締結している一方で、香港で役務提供をし、それに対する対価を日本企業が受け取っており、拠点となるアパートの賃貸契約をされているため、実体として香港に事業所があるとされ、支店PEとみなされました。
また、その他にも、駐在員事務所という形態を取っているにも関わらず、実際の業務内容が情報収集や顧客へのフォローアップ業務という一般的な駐在員事務所の活動範囲に収まらず、顧客への直接的な役務提供など利益を生み出す活動をしていると見なされた場合なども支店PEとみなされ課税が発生することがございます。
PE課税の対処方法
本記事にてPEの種類の紹介をしましたが、具体的にPEに該当するかどうかを判断するのは非常に複雑になります。自社では外国にPEを有していないと思っていても、実体としてPEを有してしまっているというケースも少なくないです。
現地の税務局の判断により、PE課税が発生した場合、納税義務が発生するだけでなく、もし意図的な申告漏れであったと判断されると、罰則金などが追加で発生してしまうリスクもあります。
そのため、もしもPEとしてみなされてしまいそうな拠点がある、もしくは事業を行っている可能性があると思われる場合は、税務局からの指摘を待つのではなく、事前に対応されることを推奨しております。
PEとしてみなされてしまうかどうかを分析をした上で、もしPEとなり得るのであれば、商流やスキームを変更することでPE課税を回避出来るかどうか、もし回避が出来ないのであれば、事前に税務局へ通知をし、自主的な納税手続きを進めるべきか、それとも子会社や支店の設立をすべきか、など様々な検討・対応が必要となってまいります。
弊社では、意思決定をお手伝いさせて頂くための分析作業やコンサルティング、実際に対応策を実行される際のサポートなど多岐にわたる業務をワンストップで提供させて頂いております。
PEに関するご質問やご懸念などございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
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