長く働いていた従業員が退職される際の引継ぎに伴うトラブルの回避策
ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、日本と比較して香港では転職がより頻繁に起こります。キャリアアップを目指すため、今の職場が合わないため、他の会社からより良いオファーをもらったからなど、様々な理由により2-3年程度で転職をされるというケースが非常に多くございます。
一方で、日系企業のお客様を見てみると、10年、20年という期間に渡って勤務されているスタッフがいらっしゃるケースも多くございます。これは日系企業特有の社風や職場環境が影響しているかと思いますが、昨今、そういったスタッフが定年退職であったり、海外に移民をされるということで、困っていらっしゃる企業から相談を受けることが増えてきています。
雇用が長く続くのは良いこと?悪いこと?
上述の通り、1つの会社における平均的な勤続年数が比較的短い香港において、雇用が長く続くというのはその会社の社風や環境が優れているということを示唆しており、それ自体は素晴らしいことだと思います。
しかし、中小規模の会社に頻繁に見受けられるのが、この様な長期雇用のスタッフに依存してしまっており、経営者や他のスタッフの方々がその方の担当業務の内容を完全には把握していなかったり、一部の作業はその方以外に誰も手順などを知らないというケースです。
この様なケースはどちらかというとバックオフィス部門で起こりがちです。
香港の日系企業の経営者は営業部門出身の方が多く、また会社を運営する上で売上が最も重要であると捉えられる企業も多いため、営業活動についてはモニタリングをしっかりとされており、結果として営業部門では上記のような問題が起こることは多くはないかと思います。
一方で、バックオフィス部門の業務に関しては、経営者自身があまり馴染み深くないこともあり、一人のスタッフに経理、人事、総務面などを長年にわたり全て任されていて、詳細は把握されていないというケースが多く見受けられます。この様な状況では会社としてリスクを抱えていることになります。
そして、そういったスタッフから退職の通知を受けた後に、慌てて後任の採用をしようとしても、時間的制約もある中で適切な人物の雇用が出来るのか、引継ぎは十分行えるのか、など多くの懸念が生まれてしまいます。
そのため、事前の準備や対応策の検討がとても重要となります。
引継ぎをするための準備
人員の交代が発生する際に最も注意すべき点は、交代後も全ての業務が滞りなく進められるかというものになります。それにはしっかりとした引継ぎを行う必要がありますが、長年働いていたスタッフには全ての作業手順は自身の頭の中に入っているため、特に書面化はされていないというケースが多いです。
口頭での引継ぎとなると、どうしても引継ぎから漏れてしまう業務が発生する可能性があり、また後述する「後任の採用」や「業務を外注するか」について検討をするためにも、事前に全ての業務の書面化をされることを推奨しております。
書面化をされる際には各業務の詳細まで記載されることが理想的ではありますが、時間がない、もしくは退職されるスタッフの引継ぎに対するモチベーションがそこまで高くない場合などは、少なくとも担当業務の棚卸しを行うという意味でも、全ての業務の簡単なマニュアル・手順書の作成をされるだけでも一定の効果は得られるかと思われます。
後任の採用ポイント
退職されるスタッフの業務の棚卸しをしっかりと行うことで、どの様な方を後任として採用すべきかというのがより具体的に分かるかと思います。前任者と同レベルの知識や経験が必要なのか、それとも、より特定の業務へ特化した人材が必要なのか、など、実際に会社に必要となる人物像が見えてくるでしょう。
ただし、実際にどの程度の経験や知識をもっているのかというのは、履歴書から判断をするのは容易ではございません。また、面接で確認をしようにも、会計などある程度の専門知識を必要とする分野においては、面接をする側にも相応の知識がないと評価をするのが難しいかと思います。
この様なお悩みを抱えていらっしゃった企業に対して、弊社では会計テストの作成や、採用面接のサポートなどを提供させて頂いておりますので、ご相談ください。
外注の検討
後任の採用を開始される前、もしくは同時に検討すべき点として、業務の外注が挙げられます。外注をすることで、当然のことながら費用が発生するものの、専門家へ依頼をすることで業務の品質に対して一定以上の安心感を得ることが出来ます。
また、後任を採用出来たとしても、定着せず、すぐに退職をされてしまうというケースが発生した場合にも、外注をしておくことで会社のオペレーションへの影響を抑えることが可能となります。このように業務を外注するということには保険的要素も含まれています。
スタッフの入れ替わりをプラスに捉えて、管理体制、内部統制の強化へ
このようにスタッフの退職に伴い発生する引継ぎや後任の採用などは、非常に手間が掛かり、また長年に渡り勤務されていたスタッフが会社を去るということは心情的にも心苦しいものかと思います。しかし、これは会社にとってマイナスな事かと言うと、必ずしもそうとは限りません。
一部のスタッフに依存してしまい、経営者を含め、社内の誰も各業務の概要を理解していない、確認をすることが出来ないという状況は経営という観点からも不健全であると言えます。
しかし、業務の棚卸をしっかりと行うことで業務の透明化を進めることが出来、またマニュアルの作成など書面化を行うことで業務効率や管理体制の確認および内部統制の改善へと繋げることが可能となります。
また、一部の作業を外注することでも、作業の効率化や安定化、品質の向上を促すことが出来ます。
このようにスタッフの入れ替わりをプラスに捉え、会社をより健全な状態へと導き、管理体制や内部統制の強化へと結びつけることが出来れば、会社の更なる発展へと繋がるでしょう。
弊社グループではこのようなお悩みを抱えていらっしゃる企業に対して、テイラーメイドのサービスを提供しており、先述の会計テストの作成や面接への参加以外にも、業務棚卸のサポートや作業マニュアルのレビュー、管理体制・内部統制環境の査定など、各企業のニーズに合わせて対応させて頂いております。事前に今後の対策を取っておきたいというお考えがある方は是非一度お気軽にご相談ください。
本記事の目的:
本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。
免責事項:
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