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香港の監査報告書について

前回の記事により大まかな会計監査とスケジュールについてイメージしていただけたかと思います。今回の記事では、監査のプロセスを経て発行される監査報告書の内容とはどんなものかについて説明させていただきます。

 

 

監査報告書の構成内容

前回の記事の復習となりますが、監査報告書は以下の内容から構成されます。

 

・取締役報告書(Report of the Director’s) 
・独立監査人の報告書(Independent Auditor’s report) 
・財務諸表(Financial Statements) 
  -注記(Notes to the Financial Statement)

 

 

通常この報告書の中で、監査人が作成する報告書は「独立監査人の報告書」のみとなり、それ以外の報告書は取締役(企業)によって作成する書類となります。しかし、香港では自社で経理部署がないような企業であったとしても監査を受け、この報告書を作成しなければならないため、監査人が対象企業とヒアリングを行い、代理で作成することがほとんどです。

 

 

しかしながら、最終的にはその内容に対して取締役が責任をもって承認の署名行為を行うため、代理で作成された報告書であったとしても、取締役が記載内容を必ず確認する必要があります。

 

それでは、どんなことが各報告書に記載されるのか、もう少し掘り下げてみます。

 

 

取締役報告書(Directors’ report)

取締役報告書は、その年度における企業の状況についてまとめられた報告書となります。非上場企業において記載される項目は下記の通りです。

 

  • 主要事業内容(もしあれば重要な変更内容)
  • 当年度中の取締役一覧
  • 取締役と会社や関連会社との利害関係に関する取引や取り決め
  • 株式・社債を発行した場合、その詳細について
  • 期末配当を出す場合、その詳細について
  • その他、重要事項

 

 

非上場企業会社の場合、記載内容が簡潔で数ページで構成されていることがほとんどです。この取締役報告書の内容に関して取締役会の承認後、取締役がその責任の下署名を行う必要があります。

 

 

独立監査人の報告書(Independent Auditor’s report)

独立監査人の報告書というのは、監査の対象企業から独立した立場である監査人が、会社の財務諸表等の適正性に関する意見表明を行うために作成する報告書です。通常下記の内容によって構成されます。

 

  • 監査人の意見
  • 意見の基準について
  • 企業の継続に関する不確実性(もしあれば)
  • 主要となる問題について(非上場企業は任意)
  • 財務諸表に対する取締役と経営者の責任
  • 財務諸表に対する監査人の責任

 

 

この報告書は、その監査法人の名前により署名されます。
(※署名者は香港CPA資格者となります。)

 

 

財務諸表(Financial Statements)

財務諸表とは、企業の財政状態と財務業績が体系的に表現されているもので、香港財務報告基準や香港会社条例に基づき作成される必要があります。(*香港証券取引所の上場規定やその他条例が適用される場合があります。)

 

一般目的財務諸表(以下、財務諸表)は以下の一式にて構成されています。

 

  • 包括利益計算書(損益計算書)
  • 財政状態計算書 (貸借対照表)
  • 所有者持分変動計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 注記

 

 

包括利益計算書(Statement of profit or loss and other comprehensive income)は、その会計年度の損益が表示されるもので、日本では損益計算書と呼ばれるものにあたります。また財政状態計算書(Statement of financial position)は、期末時点における資産(Asset)、負債(liability)、所有者持分(equity)の各残高が表示されるもので、日本では貸借対照表と呼ばれています。

 

 

所有者持分変動計算書(Statement of changes in equity)は、その会計年度の株主との資本取引や分配などが表示され、キャッシュ・フロー計算書(Statement of cash flow)は、現金および現金同等物の変動について表示されます。

 

 

これらの財務諸表は数字と各科目にて構成されているため、最後に注記(Note)にて各科目の説明情報が記載されます。また重要な会計方針の要約についても記載されますが、香港財務報告基準は、国際財務報告基準(IFRS)とほぼ同様の内容のため、実質的な相違はありませんが、注記には香港会社条例に基づく追加的な開示が求められます。

 

 

また香港では非上場企業であっても子会社を有する場合は、原則として連結財務諸表の作成が求められますが、企業の株主が単独法人株主であるなど一定条件を満たす場合は免除されます。

そして取締役報告書と同様に、取締役会にて承認後、これら財務諸表一式が会社の財政状態と財務業績を適正に表示されてあるとして、取締役の責任の下署名を行うことになります。

 

 

 

提出期限

取締役の署名および監査人(香港CPA資格保持者)の署名が入った監査報告書が完成版として企業、会計事務所にて保管、そして香港税務局へ提出されることになります。香港税務局へは、一般的に監査報告書と一緒に税金計算書および法人税申告書をセットで提出します。

 

香港税務局への提出期限は以下の通り:

 

  • 決算月:1~3月 期限日:11月15日
  • 決算月:4~11月 期限日:4月30日
  • 決算月:12月 期限日:8月15日

 

 

このように、税務局への提出期限が設けられており、また取締役および会計事務所それぞれにおいて監査報告書の物理的な署名を行うことが必要となるため、取締役によるご承認期間に関しては、香港税務局への監査報告書提出期限までに充分な余裕をもった期間を設けることが妥当かと考えられます。

 

 

 

最後に

取締役報告書および財務諸表において、取締役の責任のもと署名が行われることになります。この署名行為には責任が伴いますので、もしも既に香港での監査をご経験されている取締役の方々においては、今一度これら監査報告書の内容についてご確認いただきまして、これからご経験される方においては、内容の確認と監査人とのコミュニケーションの重要性についてご認識いただくきっかけになれば幸いです。

 

弊所青葉監査法人は、このコミュニケーションの点について重要視しており、取締役のみならず、日本本社やご本社の監査人の間に入った連携を得意としております。香港での監査において、何か引っかかる点があればいつでもご相談ください

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

免責事項:

  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
  2. 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
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