【税制上優遇政策その1】研究開発費用の割増損金算入に関して
近年、企業の研究開発活動を一層活発化させ、創新能力を強化するために、中国当局は様々な優遇政策を打ち出しています。適用条件を満たした企業様は、ぜひご活用ください~!
第1回 研究開発費用の割増損金算入に関して
【適用対象】
健全な会計処理が行われ、帳簿検査徴収方式*に基づく申告・納税を行っており、研究開発費用が正しく集計されている居民企業が適用対象企業となる。
*帳簿検査徴収方式(中国語:『査脹征収』):財務諸表が適時に作成され、帳簿・証憑・会計制度が比較的に健全な企業に対して主に適用され、税額を正確に計算することができる課税方式。それに対し査定徴収方式(中国語:『核定征収』)という課税方式もある。
税引前割増損金算入政策の適用対象外業種 | 税引前割増損金算入政策の適用対象外となる行為 |
1.タバコ製造業 | 1.企業製品(サービス)の通常のアップグレード。 |
2.宿泊及び飲食業 | 2.一部の科学研究成果のる直接的な応用、例えば、公開されている新技術、材料、装置、製品、サービスまたは知識などを直接採用する場合など。 |
3.卸売り及び小売業 | 3.企業が科学研究成果を商品化させた後に顧客に提供する技術支援。 |
4.不動産産業 | 4.現存する製品、サービス、技術、材料又は技術プロセスに対する反復又は単純な変更。 |
5.賃貸業及びビジネスサービス業 | 5.市場調査研究、効率調査又は管理研究。 |
6.娯楽業 | 6.工業(サービス)プロセスの一環とし、又は通常の品質管理、テスト分析、メンテナンス。 |
7.財政部と国家税務総局より定められているその他の業種 | 7.社会科学、芸術又は人間文学に関する研究。 |
※備考:上記業種は『国民経済業種分類とコード(GB/4754-2011)』に準じて随時更新されている。
【優遇内容】
- 2018年1月1日から2023年12月31日までに、企業の研究開発中に実際に発生した研究開発費用が無形資産を形成せずに当期損益として計上された場合、規定に基づき事実通り控除をした上で、実際発生額の75%を税引前割増損金算入をすることができる。
- 2018年1月1日から2023年12月31日までに、企業の研究開発中に実際に発生した研究開発費用が無形資産として計上された場合、無形資産の取得価額の175%を税引前に償却することができる。
【適用条件】
- 企業は財務会計制度の要求に従い、研究開発支出を会計処理するものとする。また、割増損金算入を利用する研究開発費用に対し、研究開発プロジェクトごとに補助元帳を作成し、正確に該当年度の割増損金算入可能な各種の研究開発費用の実際発生額を集計・計算する必要がある。企業は一納税年度内に多数の研究開発活動を行った場合、研究開発プロジェクトごとに、それぞれ割増損金算入可能な研究開発費用を集計する必要がある。
- 企業は研究開発費用と生産経営費用を別々に計算し、各種費用支出を正確的に且つ合理的に集計する必要がある。費用が区別できない限り、割増損金算入を適用してはならない。
- 企業が外部機関または個人に研究開発を委託することにより発生した研究開発費用は、費用の実際発生額の80%を委託先の研究開発費用に計上し、割増損金算入とすることができる。委託先が研究開発費用の税引前割増損金算入優遇政策を利用するかどうかに関わらず、受托先は割増損金算入を適用してはならない。外部委託により実際に発生した研究開発費用は、独立取引原則に従い確定されるものとする。委託先と受託先とが関連者とである場合、受託先は研究開発プロジェクトの費用支出明細を委託先に提供しなければならない。
- 企業が共同で開発するプロジェクトにおいては、各当事者は自身が実際に負担した研究開発費用によって、別々で割増損金算入額を計算するものとする。
- グループ企業が生産経営及び科学技術開発の実際状況に基づき、高い技術力が要求され、投資額も大きく、集中的に研究開発する必要があるプロジェクトにおいて、実際に発生した研究開発費用は、権利と義務が整合し、支出される費用と取得しうる収益がマッチングする原則に従い、研究開発費用の分担方法が合理的に確定され、恩恵を受けるメンバー企業の間で分担され、各メンバー企業よりそれぞれ割増損金算入をすることができる。
- 企業が革新性、創意性、突破性のある商品を作るために創意的なデザインを行い、それにより発生した関連費用は、規定に従い税引前に割増損金算入をすることができる。
- 企業が当年度の第3四半期(四半期ごとに予納する場合)または9月(月ごとに予納する場合)に企業所得税を予納・申告する際に、年の上半期の研究開発費について割増損金算入優遇政策の利用について自ら選択し、『自己判別、申告・適用、対審査のため関連資料を保存』の申請方法を講じることができる。研究開発費用の割増損金算入優遇政策の利用を選択していない場合は、翌年度の確定申告の際に、一括利用することができる。
【政策根拠】
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『中華人民共和国企業所得税法』第30条(一)項 -
『中華人民共和国企業所得税法実施条例』第95条 -
『財政部 国家税務総局 科学技術部による研究開発費の税引前割増損金算入政策の完全化に関する通知』(財税〔2015〕119号) -
『財政部 税務総局 科学技術部による研究開発費の税引前割増損金算入比率の引き上げに関する通知』(財税〔2018〕99号) -
『財政部 税務総局による一部の税収優遇政策の執行期限の延長に関する公告』(2021年第6号) -
『財政部 税務総局による研究開発費の税引前割増損金算入のさらなる完全化に関する公告』(2021年第13号) -
『国家税務総局による企業研究開発費の税引前割増損金算入政策の関連問題に関する公告』(2015年第97号) - 『国家税務総局による研究開発費の税引前割増損金算入の集計範囲の関連問題に関する公告』(2017年第40号)