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大湾区の小さな村から頭角を現すユニコーン上位企業たち【大湾区情報レター Vol.80】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。

  

広東省、肇慶市、高要区にある新橋鎮という村が世界の注目を浴びています。

 

それは、この小さな村から誕生したユニコーン企業「広東金晟新能源股份有限公司」(以下「金晟新能社」2010年設立、時価評価額120億元)が、2024グローバルユニコーンランキングに初めて名を連ねたからです。(680位)

 

統計によると、大湾区内にあるこのような小さな村に本部を設置しているユニコーン企業が合計10社にも上り、その時価評価額は合計9,806億元にも達しています。またこのユニコーン企業10社という数は、世界ランキングからすると、11位の日本(ユニコーン企業数9社)を超えて世界第12位の位置となります。

 

 

 

 

飛躍し続ける産業でチャンスを掴み、小さな村から頭角を現すユニコーン企業

2024グローバルユニコーンランキングに入ったユニコーン企業のほとんどの所在地は、中国と米国の大都市となっています。また中国のユニコーン企業数トップテンの都市は、すべてGDPが1兆元レベルに達している特別な地位(首都、直轄市、省都など)となる大都市です。

 

冒頭で紹介したユニコーン企業「金晟新能社」が誕生した村のある肇慶市は、これらの大都市と比較すると「その他の市」に含まれる規模の小さな市となります。そんな肇慶市にある新橋鎮という村に本部がある金晟新能社は、独自の成長路線を歩むことでその頭角を現しました。

 

金晟新能社の董事長秘書の徐友斌氏によると、

 

「中国の新エネルギー自動車市場はこの10年間で爆発的に成長し、そしてハイバッテリーのブームを迎えている中、金晟新能社は2005年から2024年にかけて、新エネルギーと新エネルギー貯蔵といった二大産業の急速な発展の中で、廃バッテリーを解体し、バッテリー内のリチウム、コバルト、ニッケルなどの金属元素を全量回収してバッテリー生産の再利用ビジネスによりチャンスを掴むことが出来たため、2024ユニコーン企業世界ランキングにランクインできた。」

 

とのこと。

 

 

 

 

中国の地方都市からユニコーン企業が輩出される傾向に

中国の普通の地級市(省と県の中間に位置する都市)からユニコーン企業が誕生することは特別なことではなく、現在は三・四線都市(内陸部の郊外都市)から多くのユニコーン企業が次々と輩出される傾向が強まってきています。

 

胡潤研究院(Hurun Research Institute)が発表したレポートによると、中国の三・四線都市のユニコーン企業数は、2022年にはわずか5社(時価総額1,212億元)でしたが、2023年には9社(時価総額1,528億元)、2024年には15社(時価総額2,237億元)と増加してきています。

 

 

 

 

最短わずか3年で成長したユニコーン企業も

大湾区内にある小さな町に本部を置くユニコーン企業10社の内訳は、広州市内にある5つの町(南村鎮、石楼鎮、橫瀝鎮、東涌鎮、大崗鎮)に6社、東莞市の長安鎮という村に3社、そして冒頭で紹介した肇慶市の新橋鎮に1社となっています。

 

その中でも特に有名な企業は、日本でも人気のある越境ECのSHEIN(広州市番禺)、大手通信のOPPO(東莞市長安鎮)、スマートフォンメーカーVIVO(東莞市長安鎮)、広州汽車グループの電気自動車メーカー広汽埃安(AION)(広州市番禺)、自動運転技術開発の小馬智行(Pony.ai)(広州市南沙)の5社で、この5社はそれぞれ大湾区内のユニコーン企業ランキング時価評価額トップ10に入っています。

 

このような小さな町に本部を置くユニコーン企業10社の最長発展期間は14年超で、最短ではわずか3年で成長したユニコーン企業もいます。

 

 

 

 

広東省の小鎮(小さい村)に本部を置くユニコーン新興企業トップ5社

大湾区の小さな村にあるユニコーン企業のうち5社は、以下の新エネルギー車、航空及び航空宇宙、家電、電子商取引、現代農業といった新興産業に含まれています。

ユニコーン企業名

鎮(所在地(町))

主な事業内容

小馬智行(Pony.ai)

広州市南沙区橫瀝鎮

中国全ての一線都市(北京市、上海市、広州市、深圳市)において初めて自動車無人運転の試験資格を取得した自動運転技術企業

広汽埃安(AION)

広州市番禺区石楼鎮

中国の新エネルギー車の第一人者とされる企業

中科宇航(CAS Space)

広州市南沙区大崗鎮

中大型ロケットを開発する中国初の商業宇宙企業

巨湾技研(GBT)

広州市南沙区東涌鎮

2020年9月設立、超高速充電バッテリー分野の先進企業

中芯種業

広州市南沙区東涌鎮

中国国内で最も早く豚赤身の中国最大の遺伝資源保管センターを構築し、ゲノミックセレクション(GS)を中心とするビッグデータ遺伝学評価技術を確立。

 

 

 

 

小さな村が選ばれる理由・誕生する理由

ユニコーン企業が小さな村にあることは、大湾区において注目すべき現象です。

 

ユニコーン企業の出現は所在地の産業レイアウト、サプライチェーンエコロジー、大手企業による投資選好度、小さな町の自然資源・地理的位置・社会的要素などと深く関わっています。

 

大湾区西部に位置する金晟新能社が目覚ましく発展できた理由については、先に瑞慶時代、小鵬汽車、理士電源、理士電池、楓華新能源などの多くの企業が肇慶市に設立され、産業発展のためのより良い環境と、協力のチャンスを得ることができたことによると考えられます。

 

中科宇航の李秦峰副総経理は、小さな村に会社を設立した理由について、

「南沙区は大湾区の幾何学的中心に位置し、交通が便利で、海へのアクセスが容易、工業用地が豊富であるため、企業の将来の発展や生産規模の拡大や海洋進出のために、非常に魅力的なプラットフォームと想像的な空間を提供している。」

と述べました。

 

また巨湾技研は、広州のエネルギー産業と協力し、そして自動運行有人ドローン企業「億航智能(イーハン)」と提携し、世界初のeVTOL(電動垂直離着陸機)の超高速・高速充電バッテリーを研究開発しています。

 

暨南大学経済学院教授、香港・マカオ経済研究所の副所長でもある謝宝剣氏は、

 

「デジタル化、AI化及び情報技術発展に伴い、より多くの企業が空間的な制限、特に中心都市における制限を超えて発展・拡大できることから、情報技術及びデジタル経済の発展は、小さな町のユニコーン企業のために必要な条件を提供している。」

 

と述べました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考資料】

・大湾区ユニコーン上位企業トップ10の半数の本部は小さな町に

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 






 

 

 

 

*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

 

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

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