NEWS

ニュース

【中国】労働契約と労務契約の取り扱いの違い

 

中国での「労働契約」と「労務契約」は、どちらも労働サービスという役務を提供する側とそれを受ける側との間で締結されるものですが、それぞれ契約の性質や主体が異なってまいります。

 

今回は、そんな似て非なる「労働契約」と「労務契約」の定義、ならびに税務上の取り扱いの違いについて、説明させていただきます。

 

 

一、労働契約と労務契約の定義

契約形態 契約の定義
労働契約 労働者と使用者側との間で労働関係が確立され、双方の権利及び義務が明確化された契約を指します(労働法第16条の規定による)。

 

労働契約の主体は、企業、個人経済組織、民営非企業単位などの組織、すなわち雇用単位であり、もう一方は労働者個人でなければなりません。

 

労働契約における労働報酬は、労働の量と質に基づいき確定され、双方の当事者間で取り決められるものの、国家の最低賃金基準などの法定基準を守らなければなりません。また、報酬の支払い方法は、継続的、且つ定期的に行われる場合が多いです。

 

※労働契約に該当すると、労働保険や社会保険の加入のほか、年次有給休暇の取得や雇用条件が不利益となる変更などは禁止されるため、労働法による様々な保護を受けることができます。

 

労務契約 労務提供者と労務を受ける側が、書面、口頭またはその他の形式で合意し、一方の当事者が労務を提供し、他方が約定に従い報酬を支払うという取り決めに関する契約を指します。

 

その主体双方の当事者は法人間、自然人間、法人と自然人の間のどれでも該当します。

 

労務契約の報酬は労務市場価格に基づいて決定され、当事者双方によって合意され、国による強制的な規定はなく、一般的に一括または複数回に分けて報酬が支払われる方法が多いです。

 

※業務委託契約は、あくまで事業者間の契約であるため、労務提供者は労働法上の保護の対象とはなりません(下請法や独占禁止法の除く)。

 

 

 

 

二、労働契約と労務契約の税務上の取り扱いの違い

 

<課税の違い① 増値税>

労働契約の場合:

労働者が労働契約を締結して得た収入は、増値税の課税範囲には該当せず、増値税納付は不要となります。

 

「財政部 国家税務総局による営業税から増値税への徴収変更試行の全面的な推進に関する通知」」(財税(2016)36号)第10条の規定によると、販売サービス・無形資産又は不動産の販売とは、有償によるサービス提供、有償による無形資産・不動産の譲渡を指します。但し、単位又は個人経営者が雇用する従業員が当該単位又は雇用者に報酬を取得するためのサービスを提供し、単位又は個人経営者が雇用するした従業員にサービスを提供するなどの非経営活動の状況は除きます。

 

 

 

労務契約の場合:

労働サービスの提供者が、増値税小規模納税者(個人事業主とその他の個人を含む)、または増値税一般納税者に関わらず、労務契約を締結し、加工・修理・補修・役務を提供し、収入を取得した場合、増値税及びその付加価値税を納付しなければなりません

 

「中華人民共和国増値税暫行条例」第1条の規定によると、中華人民共和国国内で物品の販売または加工・修理・補修・役務の提供、サービス、無形資産、不動産の販売及び物品の輸入を行う単位や企業と個人は、増値税の納税者として、本条例に従って増値税を納付しなければなりません。

 

 

 

 

<課税の違い② 個人所得税>

労働契約の場合:

労働者が労働契約を締結して取得した収入は、「給与、賃金所得」に基づき個人所得税を納付しなければなりません

 

 

 

労務契約の場合:

労務提供者が取得した収入は、「労務報酬所得」に基づき個人所得税を納付しなければなりません

 

「中華人民共和国個人所得税法実施条例」第6条の規定によると、賃金、給与所得とは、個人が任命又は雇用により取得した給与・賃金・賞与・年末昇給・労働配当・手当・補助金及び任命又は雇用に関連するその他の所得を指します。

 

また労務報酬所得とは、個人が労務提供により取得する所得を指し、設計・装飾・設置・製図・化学検査・測定・医療・法律・会計・コンサルティング・講演・翻訳・校閲・絵画・彫刻・映画・録音・映像・公演・上演・広告・展覧・技術サービス・紹介サービス・仲介サービス・代理サービス及びその他労務提供により取得する所得を含みます。

 

このほか、労務契約による収入が個人事業主や個人独資企業によって得られたものである場合は、経営所得として個人所得税を計算して納付しなければなりません。

 

 

 

 

<課税の違い③ 企業所得税>

企業側にとっては、労働契約に基づいて支払われる給与・賃金であれ、労務契約に基づいて支払われる労務報酬であれ、いずれも企業の日常的な経営コストとして取り扱われるため、企業所得税の税引前利益の控除対象として取り扱うことができます。

 

ただし、労働契約と労務契約の税務上控除するための証憑は以下の通り若干異なります

 

 

労働契約の場合:

従業員に支給する給与・賃金は、内部作成の証憑及び給与明細書・銀行振込記録・個人所得税申告表などの証憑(内部証憑)によって、企業所得税の税引前利益から控除することができます

 

「企業所得税の税引前控除証憑管理弁法」(2018年国家税務総局公告第28号)によると、内部証憑とは企業が自ら作成した原価・費用・損失 及びその他の支出の計算に用いる会計原始証憑(証憑の記入と使用は国家会計法律、法規などの関連規定に合致しなければならない)は、企業所得税の税引前控除証憑として使用することができます。

 

 

 

労務契約の場合:

支払った労務報酬は、発票に基づいて税引前控除を行わなければならないと規定されています。

 

「企業所得税の税引前控除証憑管理弁法」(2018年国家税務総局公告第28号)の第9条の規定によると、企業が国内で発生した支出項目は増値税課税項目に属するものとし、相手方はすでに税務登録を行った増値税納税者であり、その支出は発票(規定に従って税務機関が代行して発行した領収書を含む)を税引前控除証憑とします。

 

相手方が法により税務登記を行う必要のない単位或いは小口零細経営業務に従事する個人である場合、その支出は税務機関が代理発行する発票或いは領収書証憑及び内部証憑が税引前控除証憑として使用されます。入金証憑には、入金先名称、個人名及び身分証明書番号、支出項目、入金金額などの関連情報を記載しなければなりません。

 

 

 

 

 

まとめ

契約形態 増値税及び付加税 個人所得税 企業所得税
労働契約 納付不要 納付要

「給与、賃金所得」に基づき計算する

税引前控除可能

※ 発票、入金証憑、内部証憑によって控除可

労務契約 納付 納付要

「労務報酬所得」に基づき計算する

税引前控除可能

※ 発票によって控除可

 

 

 

弊社では日頃より税務に関するさまざまなご相談を受けております。上述について、不明な点や懸念される点等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考リンク:

劳动合同与劳务合同,税务处理大不同

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

免責事項:

  1. 本資料はあくまでも参考用として作成されたものであり、法律や財務、税務などに関する詳細な説明事項や提案ではありません。
  2. 青葉コンサルティンググループ及びその傘下の関連会社は、本報告書における法律、法規及び関連政策の変化について追跡報告の義務を有するものではありません。
  3. 法律法規の解釈や特定政策の実務応用及びその影響は、それぞれのケースやその置かれている状況により大きく異なるため、お客様各社の状況に応じたアドバイスは、各種の有償業務にて承っております。

※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

Contact Us お問い合わせはこちら