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【中国】新会社法に関わる変更点9大項目の解説(上)

 

中国では2024年7月1日より”新会社法”が実施される予定となっており、ここ最近その関心が日に日に高まり、各企業の間でも話題に上ることが増えているかと思います。

 

そこで、本記事では新会社法が旧会社法と比べて、どのような変更点があるのかについて解説させていただきます。内容がやや多いため、上・下の2部に分けさせていただきます。今回の上の部では、新会社法の重要な変更点9大項目及びその留意点について解説いたします。

 

 

1、登録資本金の5年以内の払い込み義務

新会社法の第四十七条第一項によると、有限責任会社の登録資本金は、会社登記機関で登記された株主全員による出資額とされ、当出資額は、定款の定めに従い、会社設立日から5年以内に全額が払い込まれなければならないものとなっている。

 

また、第二百六十六条第二項では、本法が実施される前にすでに登記・設立された会社に関しては、出資期限が、本法が規定する期限を超えた場合、法律、行政法規または国務院の特別な規定がない限り、段階的に本法によって規定された期限内までに調整しなければならないとしている。出資期限または出資額が明らかに異常である場合、会社登記機関は法律に従い、適時に調整を行うよう要求することができる。具体的な実施方法を国務院のより規定に従うものとする。

 

 

 

留意点:

一定期限内に登録資本金を払い込む必要があることになるため、各企業は現時点で登録資本金の全額がすでに払い込まれているかどうか今一度確認することをお勧めします。もし調整された期限内に、登録資本金全額の払い込みを完了できない恐れのある場合は、資本金を出資できる金額まで減資するなどの手続きを行うといった対応策を考える必要があるといえます。

 

 

 

 

2、非貨幣資産による出資

第四十八条第一項によると、株主は、貨幣による出資の他、現物、知的財産権、土地使用権、持分、債権など、その他貨幣で評価でき、且つ法に従い譲渡可能な非貨幣的財産でも出資を行うことが可能とされている。ただし、法律、行政法規の規定により出資として使用することが認められていない財産を除くものとなる。

 

 

 

留意点:

新会社法では出資方式において、非貨幣性資産として持分と債権の2種類が正式に追加されております。財務担当者の方は、非貨幣性資産による投資を実行される際において、行政上の手続きのみならず、それに伴う税務上の影響や、持分(資産)の譲渡に関する税務政策などにも注意を払われることをお勧めいたします。

【関連税務政策:財税〔2014〕116号、財税〔2014〕109号、国家税務総局公告2015年第40号 など】

 

 

 

 

3、出資額の払い込み期限の前倒し要求

第五十四条によると、支払期日が到来した債務を会社が返済できなかった場合、会社自らまたは支払期日が到来した債務の債権者に対して、資本金の払い込み期限にまだ達していない株主に対し、資本金の前払いを要求する権利が与えられる。

 

 

 

留意点:

前述の第四十七条では、株主は5年以内に引き受けた資本金の全額を払い込む必要あると定められている。と、解説いたしましたが、本件はその資本金の払い込み期限が到達する前に、会社が債務を期限通りに返済できなかった場合、債権者の利益を保護することを目的とし、債務の支払いを促すため、会社または債権者は、株主に対し資本金の前払いを請求する権利を行使することが可能となります。

 

 

 

4、株主による会計証憑の閲覧権を拡大

第五十七条第二項により、株主は会社の会計資料の詳細(会計帳簿及び会計証憑など)までの閲覧を要求することできるようになる。

 

株主が会社の会計帳簿及び会計証憑の閲覧を要求する場合は、閲覧目的を説明した書面を会社に申し出る必要がある。

 

申し出を受けた会社側は、株主による会計帳簿及び会計証憑の閲覧が不適切な目的であり、且つ会社の合法的な利益を害する可能性があると信じられる合理的な根拠がある場合は、閲覧の提供を拒否できる。ただしその場合は、株主の書面による提示の要求を受けてから15日以内に、拒否した理由を記載した書面を以て株主へ返信しなければならない。会社が閲覧の提供を拒否した場合、株主は人民裁判所に訴訟を提起することができる。

 

 

 

留意点:

新会社法では、株主が会計書類の閲覧に対する権限が拡大されました。すなわち、有限公司の株主は、これまで決算書や監査報告書のみを閲覧する権限があったものから、記帳証憑や原始証憑を含む会計上の詳細資料までを閲覧することができることになります。

 

 

 

 

5、有限公司取締役会の職権の調整

第六十七条第二項によると、取締役会には、以下の職権が与えられている:

 

(一) 株主総会を招集し、且つ株主総会に業務を報告すること

(二) 株主総会の決議を執行すること

(三) 会社の経営計画及び投資方案を決定すること

(四) 会社の利益分配方案及び損失補填方案を策定する

(五) 会社の登録資本金の増減及び社債の発行方案を策定する

(六) 会社の合併、分立、解散または会社形態変更に関する方案を策定すること

(七) 会社の内部管理機関の設置を決定すること

(八) 会社のマネージャーの任免及びその報酬、並びにマネージャーの提案に基づきサブマネージャー及び財務責任者の任免及びその報酬を決定すること

(九) 会社の基本管理制度を策定すること

(十) その他定款に定める職権または株主総会により付与される職権

 

 

 

留意点:

旧会社法の第四十六条では、有限公司の取締役会の職権に関して「会社の年度予算法案、決算方案を策定する」という項目がありましたが、新会社法ではこの内容が削除されております

 

 

 

 

6、出資期限未到来の持分譲渡について

第八十八条第一項によると、株主が、出資を引き受けたが出資期限にまだ達していない持分を譲渡した場合、譲受人は元々の出資期限に沿ってその出資義務を負うものとする。譲受人が期限までに全額を出資しなかった場合、譲渡人は、譲受人が期限までに払い込まなかった出資に対する補充責任を負うものとする

 

 

 

留意点:

持分譲渡における印紙税を抑えるためにも、持分譲渡契約書では、出資済みの持分に対する価格と、出資期限に達していない持分に対する価格をそれぞれ明記することをお勧めします。

【関連規定:「財政部 税務総局公告2022年第 22 号」第三条第四項】

 

 

 

 

7、利益分配のタイミングを明確化

第二百一十二条によると、株主総会にて利益分配が決議された場合、取締役会は株主総会決議日から6ヵ月以内に分配を行わなければならない

 

 

 

留意点:

法人株主は、「企業所得税法実施条例」の第十七条に従い、投資先企業の株主総会にて利益分配を決議した日において、所得の実現を認識しなければならりません。株主が自然人の場合は、投資先企業は「国税函[1997]656号」の規定に基づき、適時に個人所得税の源泉徴収義務を履行しなければなりません。

 

 

 

 

8、資本準備金(中国語で「资本公积」という)による損失補填

第二百一十四条第二項によると、会社の累積損失を補填するための積立金は、まず任意積立金と法定積立金を使用しなければならない。それでも補填できない場合は、関連規定に従い、資本準備金を使用することができる。

 

 

 

留意点:

資本準備金を累積欠損金に充当できることが、今回初めて明確化されましたが、積立金を使用した後でなければ資本金準備金を用いて補填することができないものとなります。また、ここでの損失補填は会計上の概念で、企業所得税の概念ではないことをご留意ください。

 

 

 

 

9、会計事務所の任命と解任に関する権限

第二百一十五条によると、会社の監査業務を行う会計事務所を任命または解任することに関し、定款の定めに従って、株主総会、取締役会または監事会によって決定することができる。

 

 

 

留意点:

旧会社法の百六十九条では、会計事務所の任命と解任を決定できるのは株主総会と取締役会のみと規定されておりましたが、新会社法では監事会にも同様の権限が与えられるようになりました。

 

 

 

 

 

上記に関して、何かお困り、ご懸念事項などがございましら、お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本記事の目的:

本記事は、主に香港へ進出されている、またはこれから香港進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、香港での経営活動や今後の香港ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

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