「外資企業法」移行期間措置【ニューズレター Vol.94】
本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として、青葉グループの広東省広州市天河区に拠点を構える弁護士事務所より作成しております。
【背景】
2020年1月1日より「中華人民共和国外商投資法」が施行され、従来の外資三法(中華人民共和国外資企業法・中華人民共和国中外合資経営企業法・中華人民共和国中外合作経営企業法)より取って代わった。
同法によると、同法施行前に「中華人民共和国中外合資経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」、「中華人民共和国中外合作経営企業法」に基づいて設立された外商投資企業は同法施行後5年内(2020年1月1日から2024年12月31日まで)は従来の企業組織形態などを継続して保持することができるとされ、この5年間は「中華人民共和国外商投資法」の移行期間と呼ばれている。
【影響】
「外商投資法」の公布は、外商投資企業(以下「外資企業」)の法的根拠が統一されたことを意味し、中国国内企業と外資企業が企業統治面で正式に同じ軌道に乗ったことを意味する。
【主要内容】
一、外資企業の内部企業統治面における設計及び適応
- 外資企業が「中華人民共和国会社法」に従い組織構造等の調整を適時に行わなかった場合の影響。
2025年1月1日以降、法に従った組織形態、組織機構等の調整を行わず、変更登記も行わなかった既存の外資企業に対し、市場監督管理当局は、その申請に関する登記事項処理を行わず、かつその状況を公示する。そのため、移行期間満了後、市場監督管理部門は、移行期間内に企業の組織形態を変更しなかった外資企業に対して率先して職権により逐一調査・処分することはしない。しかし、一旦外資企業がとある登録事項の申請手続きを行った場合、市場監督管理部門は企業組織形態変更も一括処理するよう要求する。さもなければ、その登録事項の申請を処理することができない。 - 外資企業の組織構造が直面するジレンマ
「中華人民共和国会社法」によると、株主は法に基づき資産収益を有し、重大な意思決定への参与及び管理者の選択等の権利を有する。これは外資企業における株主の重要な権利及び職責の再配分を意味するため、各株主間の新たなかけ引きが生じるのは必至であり、極端な場合には、企業のデッドロックが発生する可能性さえある。移行期間の大半が経過した今、外資企業はできるだけ早く企業の組織形態や企業統治構造の調整を完了することが推奨される。デッドロックに陥った場合、株主間のコミュニケーションチャネルを円滑に保ち、できるだけ交渉により問題を解決すべきである。交渉が不調に終わった場合、実情に応じ、裁判所に会社解散訴訟を提起するか否かを検討することができる。
二、「三項基金」の積立に関する問題
外資企業が会社法上の利益分配において、「三項基金」(従業員奨励及び福利基金、予備基金、企業発展基金の3つの基金)の積立を行う必要があるかどうかという問題については、実質的に「会社法」と従来の外資企業に関する法律と行政法規との関係をどのように処理するかという問題がある。「会社法」によると、会社は当年度の税引後利益を分配する際に、利益の10%を会社の法定積立金として積み立てなければならない。会社の法定積立金の累計額が会社の登録資本金の50%を超える場合、これ以上の積立を必要としない。「中外合資経営企業法実施条例」によると、合資企業は「中華人民共和国外商投資企業と外国企業所得税法」に従い、所得税を納付後の利益分配原則は以下の通りとなっている。(一)取締役会が決定の割合で予備基金、従業員奨励及び福利基金、企業発展基金を積み立てる。「外資企業法実施細則」によると、外資企業は中国税法の規定に従い、所得税納付後の利益に対し、予備基金と従業員奨励及び福利基金を積立してなくてはならない。予備基金の積立率は税引後利益の10%を下回ってはならず、累計積立額が登録資本金の50%に達した時点で、これ以上積み立てなくてもよい。従業員奨励及び福利基金の積立率は外資企業自身が設定可能である。新「会社法」における外資企業の法律適用問題を更に明確するために、国家工商行政管理総局・商務部・税関総署・国家外貨管理局が「『外商投資企業の審査・認可と登記管理の法律適用に関するいくつかの問題の実施に関する意見』の発行に関する通知」(工商外企字[2006]81号)及び「『外商投資企業の審査・認可と登記管理の法律適用に関するいくつかの問題の実施に関する意見』に関する通知」(工商外企字[2006]102号)の2つの文書を2006年に相次いで公布した。これらの文書の規定によると、外資企業が会社法の規定に従い、利益剰余金を積み立てるか、それとも元の外資企業の関連法律法規に従い三項基金を積み立てるかは、主にその会社定款の中で利益分配に関する事項をどのように規定しているかによることとなっている。
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