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深圳:市場参入ネガティブリスト以外の外資規制を禁止【大湾区情報レター Vol.45】

「大湾区情報レター」では、今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をピックアップしお届けしていきます。


  

    

 外資のホットスポットである深圳は、大湾区と深圳デモンストレーション先行区という2つの「区」を背景に、近年「外資の安定化」のために新たな施策を打ち出しています。このたび、深圳市は再び「深圳経済特区外商投資条例」(以下、「条例」)を導入し、外国投資家と外商投資企業に「安心」を与え、経済発展のための外資推進を強化するために、特区立法という形で制度保証と設計を行っています。

 

 深圳は、中国が公表した外資参入のネガティブリスト以外の外資参入の制限・禁止措置の策定を禁止するとし、本条例は2022年11月1日から施行されます。

 

海外からの累積投資額が3,000億米ドルを突破


 外商投資企業は、持続可能な経済発展の促進、対外貿易の拡大、産業構造の最適化、雇用の増加、市場主体の育成、市場メカニズムの改善において、独自の役割を担っています。改革開放の最前線である深圳は、外資導入の推進と外資サービスの充実において、先駆的な優位性を持っています。1981年に外資企業の営業許可証が初めて発行されて以来、深圳には10万社以上の外商投資企業が設立され、契約ベースで3,000億米ドル以上の外資を導入し、中国国内でも上位に位置しています。

 

 近年、深圳は世界各地でのコロナ禍及び直接投資の低迷という二重のプレッシャーの中で、変わらず外資を誘致し続けています。深圳市商務局によると、2021年に深圳で設立された外資系企業は6,000社近く、前年比30%以上の伸びを示し、外資の実際の利用額は100億米ドルを超え、前年比20%以上の伸びと過去最高を記録しました。

 

 2022年上半期、深圳の実行ベース外資導入額は前年同期比約11%増の約58億米ドルで、その中では、スイスのABBグループの電動モビリティ中国本部、シーメンス(深圳)磁共振有限公司(Siemens Shenzhen Magnetic Resonance Ltd.)博士研究員イノベーション・実践基地、フィリップス深圳イノベーションセンターなど、多くのフォーチュン500企業やプロジェクトが次々と深圳に進出しています。

 

 深圳市商務局は、深圳における外資吸収の特徴は、第一に、サービス業の占める割合が高く、成長が速いことであると述べています。深圳のサービス業に使用される外資の実質的な割合は2021年には90%に達し、成長率は2016年の16.5%から21.7%になりました。第二に、投資元が幅広く、2016年から2021年までに世界150以上の国と地域の企業が深圳にて投資していることです。そして第三には、重点地域の支援が明らかであることです。 前海は深圳の外資吸収のスポットであり、投資誘致における大きな役割を果たしており、近年、前海の外資利用実績は全体の50%以上を占めています。

 

 このように目覚ましい成果を上げたものの、調査研究によると、中国や海外の先進都市と比較すると、深圳の外商投資企業の行政サービスに対する満足感は、まだまだ改善・強化が必要であることが分かりました。

 特に、2020年1月1日の「中華人民共和国外商投資法」及びその施行規則の施行に伴い、中国は外資の管理を規制し、外資の合法的権益を保護するためのより高い要求を打ち出しており、深圳市は香港・マカオに近い立地や外資開発の実情を踏まえ、上記法律をさらに磨き上げる必要があるとしています。

 

 このため、「条例」は外商投資参入と経営のライフサイクルを背景とし、外商投資企業への配慮に着眼し、関連法律と行政法規規定を細分化し、深圳市の外商投資の実践の成果を固定化すると共に、外資の投資を促進し、外資投資の合法権益を保護し、外商投資管理などの方面において一連の制度整備を行います。

 

 深圳は、中国で初めての外資投資促進のための公共サービスシステムを開拓し、外資企業の権益を保護するためのワークステーションを構築したと報告されています。現在「市レベル+区レベル+園レベル」の「2+2+10」サービスネットワークを構築、「深圳市外資系投資促進サービス情報プラットフォーム」を最適化、改善し「インターネット+ワークステーション」のオンラインとオフラインでの統合発展モデルを推進しています。本年の実際の外資の活用は100億米ドルと予想されています。

 

ネガティブリスト以外の分野においては国内外の投資家が平等に参入

 

 外資企業の自由な参入、より利便化した投資活動、より公平な市場競争を促進するため、「条例」は全国の外資参入制度をより細分化して、国が公表した外資参入ネガティブリスト以外の外資参入に対する制限的・禁止的な措置の策定を禁止し(前海蛇口自由貿易区においては国が公表した自由貿易区のネガティブリストを適用)、ネガティブリスト以外の分野への外資参入は内外投資一律の原則に基づいて管理されます。外資参入のネガティブリスト以外の分野では、国内企業と同じ条件で参入が可能であり、国が発行する市場参入ネガティブリストに記載の参入許可事項は、海外投資家により申請を行い、関連部門は法令に基づいて参入を認めるかどうかを判断することになります。

 

 海外投資家は、国の「外商投資奨励産業目録」と深圳市重点開発分野、及び先進製造業、新興産業、ハイテク、省エネ、環境保護などの重点開発分野に対する投資について奨励・指導を受けることができます。また、海外投資家が経済特区に多国籍企業の地域本部や各種機能機関の設置をすることが奨励され、アジア太平洋地区本部、グローバル本部への格上げを支援されます。

 

 同時に、深圳市商務部は、大型外資系投資プロジェクトに対する健全なサービス体制を構築し、台帳管理および全プロセスの追跡サービスを実施する予定です。プロジェクトリストに含まれるプロジェクトについては、参入、計画、土地利用、環境保護、エネルギー利用、建設、外国為替などの事項を調整し、グリーンチャネルを確立し推進します。

 

地域・部門を超えた迅速かつ協力的な知的財産権保護

 

 海外投資家の深圳への投資意欲をさらに高めるため、「条例」は、外資系投資促進サービス情報プラットフォームを通じて、海外投資家と外商投資企業に情報提供とプロジェクトマッチングサービスを提供するだけでなく、公共サービスの提供、外商投資企業のクロスボーダー融資と資金決済処理も促進させる予定です。

 

 例えば、法定権限内で雇用、経済発展、技術革新の促進に大きく貢献する外資系プロジェクトには、手数料免除、土地確保、公共サービス提供の面で投資促進政策が適用され、金融、税制、財政、土地利用の面で優遇措置が法律に基づき実施されます。

 

 コロナ予防と制御の要件を考慮し、海外投資家または外商投資企業が事業活動に関連する事項については、特別な事情により担当者が現地で手続きに出席できなかったり、資料原本を提供できない場合、関連部門や機関はオンライン手続きなどの代替手段や公証・認証された書類の受け入れにより、利便性を提供することが可能となっています。

 

 また、「条例」は外商投資企業の権益保護を強化し、知的財産権に関しては、知的財産権を迅速かつ協調的に保護するための地域・部門横断的メカニズムおよび知的財産権行政執行の保護システムを構築し、市・区裁判所は知的財産権に関わる海外投資者および外商投資企業の財産・証拠・行為の保全申請を法律に基づいて迅速に受理・審査し、知的財産権を故意に侵害した重大なケースには法律に基づいて懲罰賠償が適用されるものとします。

 

国際的な職業資格認定リスト制度の確立を模索

 

 また、「条例」は、海外投資家が研究開発イノベーションセンター、外資系研究開発本部、オープン・イノベーション・プラットフォームを設立すること、多国籍企業が他の企業、高等教育機関、科学研究機関と共同研究開発機関を設立することを奨励し、海外の世界的著名企業、高等教育機関、科学研究機関が深圳市に支店、支部を設置し関連優遇政策を受け、主要科学技術成果の現場での転換を促進するよう支援します。

 

 深圳市科学研究施設・測定機器オープンサービスプラットフォームの統一管理下にある大型科学研究測定機器施設と主要科学技術インフラも、外資系企業に対等に開放・共有することが可能です。

 

 また「条例」は、公共の安全や人々の生命・健康に直接関係せず、リスクをコントロールできる分野では、国際職業資格の認定制度を検討し、証明書が必要な一部の職業については、中国国外の公認国際職業団体から対応する職業資格または証明書を取得した国際人材は、その能力レベルが関連主管部門によって認定または登録された後に、実務活動に従事することが許可されると定めています。

 

 また、税関は通関チェーン全体の業務プロセスを最適化し、国際貿易のワンストップサービスの建設を深めていき、通関効率を向上させます。また、信用育成サービスを提供することにより、条件を満たす外資系企業が認定事業者になるための申請を導き、対応する通関手続きの円滑化を支援します。

 

 

 

【参考資料】

 

・深圳:市場参入ネガティブリスト以外の外資規制を禁止

 

 

 

 

 

*本記事が記載されている大湾区レターは、以下のリンク先からダウンロードしていただけます。

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本記事の目的:

本記事は、主に中国へ進出されている、またはこれから中国進出を検討されている日系企業の皆様を対象に、中国国内での経営活動や今後の中国ビジネスに重大な影響を及ぼしうるような国家・地方レベルの最新の法律法規と関連政策の主な内容とその影響、日系企業をはじめとする外資系企業の取るべき主な対策などを紹介することを目的として作成されています。

 

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